スポーツ科学でみる

電気で筋肉を刺激するEMSのトレーニング効果


筋肉に電気刺激(Electrical Muscle Stimulation: EMS)を与えれば
運動しなくてウエストが引き締まる。腹筋が割れる。筋肉がつく。楽にやせる。
という機器が販売されています。

腹筋の割れた男性や素晴らしいスタイルの女性がCMに登場するからでしょうか。
その機器を使用すれば、楽に体を鍛えられそうな気がするので、不思議なものです。

●効果はあるのか
アメリカ運動評議会(American Council on Exercise )は
Wisconsin大学で29名の大学生を被験者として、8週間のEMSトレーニングを実施。
結果は
体重、体脂肪、筋力、外観に何ら改善も見られなかった。と報告しています。
電気刺激を強くしても効果に変わりはなく、痛いだけだったそうです。
Electrical Muscle Stimulation (EMS) Claims Exposed by American Council on Exercise Study

日本でも慶應義塾大学スポーツ医学研究センターが、健康な人29名に
毎日45分間、全身3部位をローテーションさせながら、12週間電気刺激による
トレーニングをした実験があります。
電気的筋肉刺激(EMS)による筋力トレーニングの体組成に及ぼす効果の検討
結果は
男性:トレーニングの前後で差がなかった
女性:除脂肪体重 約0.8kg増加(筋肉量UP) 。体脂肪率 約1.4%低下。 
電気刺激を強くしても効果に差はなかったそうです。

なぜ女性には多少なりとも効果があって、男性には全く効果がなかったのか。
運動不足気味の人がこの実験の女性の中に多かったから。と推測されています。

●リハビリや低体力者には効果的
EMSは元々、寝たきりの患者や高齢者などのリハビリに使われていたもの。
低体力者や術後の筋肉の委縮、筋力の低下を防ぐ効果は広く認められています。

スポーツの現場ではケガをして、動かせなくなった筋肉を刺激するため。
意識し辛い筋肉を刺激して動きやすくするため。疲労回復を促進するために
EMSは使われていますし、私も選手に対して使っています。

しかし、一般的な人の筋肉を増やしたり、脂肪を減らす効果は確認されていない
のが現状です。

●刺激に注意
他社製品より強い電気刺激を与えて...と謳っている商品もありますが、
実験でも確認されている通り、刺激を強くしても痛いだけです。
それどころか皮膚がやけどしたり、水ぶくれを起こす人も多いようで、
国民生活センターもかなり前に注意情報を出しています。
電気刺激による筋肉増強をうたった商品の安全性

楽してダイエットできる。筋肉がつく。あればいいなと心から思いますが、
いまのところそんな物はなさそうです。

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コラムニスト:柴田 明

フィジカルトレーナー

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