スポーツ科学でみる

30Kmの壁は脳の錯覚 -総運動量の4分の3が疲れのピーク-


前回マラソンの距離でハイペースを維持するには、
体に蓄えられる糖質だけでは足りないことがわかりました。
今回はラストスパートの不思議について考えてみましょう。

エネルギーが足りなくなり、疲れが溜まっているのに走り続けたら、
徐々にペースダウンして走れなくなるはず。
マラソンで考えるとラスト10kmよりラスト1kmの方がきつくなる。

でも不思議なことに、疲れ切ってフラフラになった人ですら、
ラストスパートと言って最後はペースアップできることが多い。

マラソンに限らず他のスポーツでも肉体的なエネルギー切れや、
疲労物質の増減が原因で起こる「疲労」と、
疲れを脳で感じとる「疲労感」は一致しないようです。

脳が先に疲れる
脳は総運動量を予想して、体が完全に疲れて壊れないように、 
筋肉にエネルギーを残すような仕組みになっている。
と2004年に発表したのが南アフリカの運動生理学者Timothy  David  Noakes博士。

・運動の総量(タスク)を脳は認識している。
・総運動量に対して、筋肉がエネルギーを使い切らないようにある地点で
 「運動がきつい」と感じるように脳がシグナルを出す。(疲労感の発生)
・実際は筋肉にエネルギーは残っている
らしいのです。

総運動量の「4分の3」で疲れを感じる
では、脳からどんな物質が出ると疲労感が出るかと言うと、
徐々に解明されていますが、完全にはわかっていません。

どんな物質が出ているか正確にわからないので、
総運動量に対してどれ位の地点で疲労感がピークになるのかも、
正確にはわかりません。

ですが、
マラソンで突然ペースが落ち始める「30Kmの壁」
42kmの約4分の3。
野球の7回は先発ピッチャーが調子を崩し点を取りやすい「ラッキー7」
9回の約4分の3。
ダッシュ10本と言われて、一番辛く感じるのは7本目辺り
これも約4分の3。

経験的に、脳に疲労感をもたらす物質の放出ピークは
運動の総量に対して「4分の3」辺りだろうと推測されています。
(参考:ジェニファー・アッカーマン著「からだの一日」)


攻める地点
例えエネルギーが満たされていたとしても、
総運動量に対して4分の3辺りは脳が疲労を感じる「疲労感」がピークになる地点。
脳は「体が疲れているよ」と間違ったシグナルを出します。だから突然苦しくなる。
苦しくてもゴールに近付くと、疲れを感じさせる脳のシグナルが弱くなる。
だから残ったエネルギーを使ってラストスパートできる。

体力的には余裕があっても、とても苦しく感じるこの4分の3地点は
皆が一番苦しく感じるポイントです。
相手が勝手に落ちてくれるので、ここでもうワンプッシュできれば、
大きく引き離せるし、自己ベストを更新できる可能性も広がります。

結果を求めてスポーツしているなら
疲労感はあっても完全には疲労していない
4分の3地点からさらに攻めて、好記録を狙いましょう。
コラムニスト:柴田 明

フィジカルトレーナー

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