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東京マラソンの川内選手-糖質補給の失敗と失速の関係-

先日の東京マラソン。
期待された公務員ランナー、川内優輝選手は残念ながら14位に終わりました。
原因の一つとされているのが「スペシャルドリンク」の補給失敗。
テーブルに並んだ、自分専用ボトルを3回連続で取れなかったのが影響した。
と言われています。

NHKオンラインの動画を見ると、川内選手はハチミツをベースにした
ドリンクを置いていたようです。

ハチミツは糖質。
スペシャルドリンクを取れなかったことが失速の原因だと考えると、
糖質が補給できなかったから、失速したとも言えます。

マラソンでもエネルギー源の大半は糖質
マラソンは、脂肪をエネルギー源にして走っているイメージがあるかもしれませんが、
必ずしもそうとは言えません。

古い資料で画像が荒いのですが、下の表を御覧ください。
carb-fat.jpg


















浅野克己訳:運動生理学から抜粋
・横軸は運動強度。
・「脂質」が使われている割合は縦軸左。横軸の運動強度が高くなるほど0%に近付きます。
・「糖質」は縦軸右。運動強度が高くなるほど使われる割合は100%に近付きます。

マラソンでもトップランナーなら80%前後の運動強度で走り切ります。
(一般ランナーは60~70%程度)

80%の運動強度で脂質が使われている割合はたった10~25%。
糖質が使われている割合は90~75%なのがわかります。

無補給では走り切れない
川内選手の体重は64kg
ランニングの消費カロリーを簡易的に求める方法は体重(kg)×距離(km)。
64kg×42km=2688kcalが完走に必要なエネルギー。

最大運動強度の80%のスピードを維持するのに必要な糖質の割合は、
全エネルギーの約80%なので2150kcalです。

糖質は体内で筋肉と肝臓にグリコーゲンとして、
血液中には血糖として存在しています。その量は「最大」で1500kcal程度。
前日にごはんやパンなどの糖質をたくさん食べてもこれが限界です。

2150kcal-1500kcal=650kcal分の糖質が足りない。
エネルギー源の糖質がなくなればれば、当然失速します。

前半から小まめに補給する
体に保存できる糖質だけでは足りないので、スペシャルドリンクで「糖質」を
補給することが、80%の運動強度でマラソンを走り切るのには必要。

でもタイミングにも注意が必要。
糖質が血液に送り込まれるには、速くても15分程度かかります。
切れてから補給しても間に合わないので、切れる前に摂ること。

もう一つ。大量に摂らないこと。
糖質を吸収するために出るインスリンというホルモンが、脂肪の利用を妨げます。
トップランナーでも約20%は脂肪を利用するので、これも失速の原因になる。
少量の糖質であればインスリンの影響は最小限に抑えられます。

糖質が切れてからでは遅い。でも大量には摂れない。
それなら切れる前に少しずつ、何度も摂るしかありません。
足りない糖質650kcalを小分けして、走りはじめから少しずつ補給すれば
「糖質」「脂肪」両方から来るエネルギー切れは起こり辛くなります。

失速の原因
川内選手は前半にスペシャルドリンクの補給できなかったので、
後半の糖質が足りなかった。だから失速した。

トップランナーほど糖質をエネルギーにする割合が多いので、
たった1回の補給の失敗が、失速の原因になることもありえます。
それを3度も失敗したのですからなおさらです。


マラソンだけでなく糖質不足は即パフォーマンスの低下に結びつくので、
サッカーやバスケットのような高強度のスポーツを長時間する時は、
小まめな糖質補給も忘れないようにしましょう。
コラムニスト:柴田 明

フィジカルトレーナー

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