観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

女子がこの映画が好きと言えば、絶対モテキ到来!


みなさん、映画は一人でご覧になりますか?
それとも誰かと一緒に観るのがお好きですか?
アートシアター系は誰にも邪魔されずに一人でじっくり感動を味わいたい。
エンタメ系はカップルや家族や友達同士で、観終わった後の感想もわいわい。
どちらが好きかは、映画のタイプにもよるかもしれません。

このコラムはオンエアされた映画がネタなので、
基本的にはお家の居間で観る環境が前提。
僕は普段の帰りが遅めなので、夕食と大好きなお酒を頂きながら
寝ている家族を起さないようにボリュームに気をつかって、
独り寂し...もとい、一人楽しく映画を観ることが多いかなあ。
大抵は時間切れで、1本を2日に分けて観るのが精一杯ですけれど、
そんなひと時は、一日の疲れを癒す貴重なリラックス・タイムなんです。

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.5】

『ブレードランナー/ファイナルカット』(2007年/米・香港/監督:リドリー・スコット)
★11/15(火) 22:00~00:00 NHK BSプレミアム

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レンタル屋さんなどでは、
今夜観たい映画をカップルで仲良く選んでる光景をよく見かけます。
大抵一人で観る事の多い僕は、羨ましいなあなどと思いつつ、
みなさん、どんな映画選んでるんだろう?と、とっても気になったり。

やっぱりああいう時は、恋愛映画やアクション映画が向いているのかな?
あ!ホラー映画っていう手もありますね。
ちょっとセクシーな映画なんかは、大人同士のカップルのみに許された上級編?

こうしたカップル鑑賞向けの映画の中で、SFというジャンルはどうなのでしょう。
『スターウォーズ』や『スタートレック』といった王道スペースオペラもの。
『エイリアン』や『プレデター』といった異星人ホラー&アクションもの。
最近の秀作だと、新作『ミッション:8ミニッツ』もとっても面白い、
新進気鋭のダンカン・ジョーンズ監督『月に囚われた男』のようなロジックもの。

ひとくちにSFと言っても、このように様々なパターンがあります。
そして、いずれのパターンでも
男性諸氏で「SFは嫌い」という人はあまりいない気がします。
しかし逆に、僕の知る限りかも知れませんが、
SF映画に傾倒している女子のほうは、あまり見かけません。

これは、小さい頃から男の子たちが慣れ親しむ、
<プラモデル文化>と無関係ではないと僕はにらんでいるのですが。
その先は男子会的な狭~いお話になってしまうので、今回は後回し。

とにかく、そうした男女の嗜好差によって
カップル鑑賞でSF映画がチョイスされるケースは比較的少ないのではないかと。

しかし。ここでご登場するのが先週2007年の最新映像版が放映された
SF映画至上の最高傑作、『ブレードランナー』(82年製作)なのです。

今回放映されたのは公開25周年を記念して2007年に作られた
高画質+未公開シーン+完全版単独シーン復活の"ファイナル・カット"

でもでもでも!ファンにとっては
初公開時のリサーチ試写で、難解だの暗過ぎるだの言われて
泣く泣くナレーションや別エンディングを加えた"初期劇場公開版"も、
(エンディングの空撮はキューブリックの『シャイニング』未使用カットを拝借!)
その後に作られた"完全版"も、
ナレーションを排し、エンディングも監督の最初の構想どおりに修正した
"ディレクターズ・カット"も、
今回の"ファイナル・カット"も。

何だっていいのです。
だってコレもアレも、あの『ブレードランナー』なんですから。

それほど程までにファンを魅了する、
初公開から30年近く経っても全く色褪せない鮮烈な未来イメージと死生感。

環境破壊によって酸性雨が1年中降り続き、
日本や中国のアジア文化がミクスチャーされた
2019年(もうすぐ!)のLAを舞台に繰り広げられる、
人間以上の知能と運動能力を持つ奴隷アンドロイド=レプリカントと
不法侵入レプリカントの処刑を命じられた
特命捜査官"ブレードランナー"の壮絶な戦い。

奇才シド・ミードのデザインによるサイバーパンク的なガジェット。
ハードボイルド・タッチを近未来の世界観に融合したセンス。
寿命以外は完璧な人造人間の心の奥底を覆う、深い悲しみ。
そしてクールなラブ・ロマンス。

その他、
ヴァンゲリスによる素晴らしいサウンドトラックや
怪優:ルトガー・ハウアーの伝説的なアドリブの台詞による
荘厳なクライマックスなど。
この映画の凄さは色々なところで語られ尽くされているので、
僕ごときがもっともらしく書くのも野暮というもの。

ですから、ここでは僕の好きなシーンをひとつ挙げてみたいと思います。
それは、レイチェル(ショーン・ヤング一世一代のアタリ役!)が投げ捨てた写真を
ハリソン・フォード演じるブレードランナー=デッカードが拾い上げる場面です。
マイホームのポーチで微笑む幼いレイチェルと母の写真。
クローズアップされたその写真に写る優しい木漏れ日が、一瞬、微かにゆらめきます。
ソリッドな本編には一見相応しくないような、こうした繊細さが
この映画をエヴァーグリーンなものにしている気がします。

女子のみなさんにとっては、あまり馴染みがないかもしれないSF映画。
でも、この『ブレードランナー』だけは別格。絶対に観て損はしません。
しかも、男性陣でこの作品をフェイバリットに挙げる人もかなり多いので、
「あたし『ブレードランナー』好きなんだ♪」と言えば
おおマジいい趣味してんじゃん!と周囲の男性のあなたを見る目が変わること請け合い。
思わぬモテキが到来することでしょう。

ということで、
次のDVDのカップル鑑賞の際には、是非ともこの作品を選んでみて下さい。
んでもって観終わった後は...

Say"Kiss me."- Kiss Me.
"I want you."- I want You.
Again.- I want you!...Put your hands on me.

「"キスして"って言うんだ」「キスして」
「"抱いて"」「抱いて...」
「もう一度」「...抱いて!...離さないで...」

デッカードとレイチェルのように盛り上がっちゃって下さいませ。
...って、やっぱりカップル鑑賞って羨ましいっす。

(おしまい)

*  *  *  *  *

【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『ミツバチのささやき』(1972年/スペイン)
★11/23(祝) 13:00~14:40 NHK BSプレミアム

10年に1作の寡作監督:ビクトル・エリセ。
映画を観る、という行為がひとつの体験だとするならば、
そのイマジネーションが僕らの人生に侵食する、
フィクションと現実との境界線を可視化したとも言える大傑作。
この作品を観たと観ないとでは、
大げさに言えばあなたにとって映画の意味が変容するほどの、
そんな、観ずには死ねない1本です。
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

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