観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

バンド映画のウソ・ホント


ハロウィンが終われば、街はクリスマス商戦一色。
気分はすっかり年末モードに突入しました。

年末と言えば、カウントダウン・ライブやTV特番など、
音楽業界も1年で最も盛り上がる時期。

弊社関係でも、11月16日と23日にそれぞれDVDとBlu-rayで
感動のライヴ『宮城ライブ~明日へのマーチ!!~』をリリースする桑田佳祐さんが、
「桑田佳祐 ライブ in 神戸&横浜 2011 ~年忘れ!! みんなで元気になろうぜ!!の会~」
を開催することを発表しました。
カウントダウンは実に4年ぶり。
大晦日の横浜公演はWOWOWでも生中継されますので、
オンエアナビをご覧のみなさま、是非お楽しみに♪

さて音楽と言えば、先週はハロルド作石原作の大ヒット・バンド漫画
『BECK』の実写映画版がTV初放映されました。

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.4】

『BECK』(2010/日/監督:堤幸彦))
★11月11日(金)午後21:00~23:24 日本テレビ

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いないんです。
アマチュア・バンドの演奏中のミスに愛想を尽かして、
怒って帰っちゃうようなスカウトマン。
だって、ホントのスカウトマンは、完成度よりも可能性を求めてるから。

いないんです。
ふんぞり返って威張りくさるようなプロデューサー。
だって、ホントのプロデューサーは、
難しい事は求めたとしても、厳しい事は言ったとしても、
結局は人が団結した時に生まれる素晴らしい力を知っているから。

いないんです。
幻のギターを追いかけて、そのためには殺人も厭わない、音楽業界の黒幕なんて。
だって、ホントの黒幕はヒットとスターを作る事にしか興味がないから。

いないんです。
ライバル同士で潰しあい、客やお目当ての彼女を奪い合うようなバンドマン。
だって、好みの近いバンドだったらお客さんは両方好きだろうし、
全くそりの合わないバンドが作る音楽なら、絶対に音楽性も違うので、
それぞれにつくお客さんは自然とすみ分けされてバッティングしないから。
だって、史上最高のライバル・バンドを思い出して下さい。
ビートルズ好きはストーンズだって聴くし、
ストーンズ好きもビートルズは聴くでしょ?
水と油でも共存できるのが音楽。ロックの歴史がそれを証明しているんです。

でも何故だか、漫画や映画のバンド・ストーリーって、そうなっちゃうんだなあ。

いや、ウソだからダメってことじゃありません。
ドキュメント意外の映画は、極論を言えばウソのかたまりなんだから。
でも、映画のウソはやっぱり綺麗なウソであって欲しい。

バンド映画としての『BECK』のウソ。
それは冒頭に挙げた<ホントはいない人たち>なんですけれど、
映画のウソとしては残念ながら、少々安普請だったように思います。
もうちょっと「こういう事がホントにあるかも?」って騙して欲しかった。

ただ、そんな事なんてぜ~んぶ目をつぶったって構わないんです。
やっぱりバンド映画だから、肝心要の演奏シーンで感動出来さえすれば。

だから、水嶋ヒロ演じる竜介が
伝説のブルースマンとセッションして共鳴しあうシーンは、
スクリーンを観ている僕らが引き込まれる程でなければならないと思うんです。
それがあんなにあっさり。全然スゲ~ッ!って思えないし...。

そして、何よりも佐藤健演じるコユキのボーカル処理。
最初は良かったですよ。うん、これは最後の最後に取っておくための布石だろうと。
でも、そうではありませんでした。ううむ...。
これは斬新だとかいう問題ではなくて、単に一番大事なところを避けてるとしか...。
一番カッコイイのが、オープニングで使われたレッチリと
エンディングで使われたオアシスでは、やはりマズいのではないでしょうか?

レコード会社員だから、ちょっと厳し過ぎるかな~?
ご覧になったみなさんはいかがでしたか?

それでも。
いじめや恋に悩み、夢を追ってバイトに明け暮れる未来のロックスター像は
決して雲の上のスーパスターではなく、僕らの日常と地続きの場所に立っていて、
ゼロ年代以降のロックシーンを正確にフォーカスしていたとは思います。

また、何故か<楽器は出来ないガサツ者だけど、人柄とパワー勝負>という
ステレオタイプで描かれがちなドラマーを、
それとは正反対のキャラクターで描いていたところも素晴らしい。
ホントのドラマーって、几帳面じゃないと正確なビートは叩けないし、
力まかせじゃいいサウンドは出せないし、
周囲の意見を捉えてまとまる大らかさと包容力がないと務まらないんですよ。
中村蒼演じるドラムのサクは、その点で違和感がなく、良かったです。

それから、ヒロインの忽那汐里ちゃんはズバ抜けて可愛いく撮れていました♪

そういう良いところも沢山あったので、
もう少し本筋の音楽の部分がグっとくれば、大満足の青春映画になったかなあ。

それでは、レコード会社員の僕も感動の音楽映画といえば?

最近の作品では、アイルランド映画の
『ONCE ダブリンの街角で』がダントツに素晴らしく、オススメです。
僕の周りのミュージシャンで、この映画の事をを悪く言う人、実はいません。
それだけ、音楽のホントが詰まっている珠玉作。
観終わった後、何とも言えない切なく優しい気持ちになれる1本です。

さてそれでは、コラムのシメに、クイズをひとつ。

映画『BECK』でも、ライバル・バンドが凌ぎを削っていましたが、
競合するアーティトのリリースやぶつかっちゃった時、
果たしてレコード会社は実際にはどうするのか?
映画『BECK』では教えてくれない、その真実の秘策とは!?
シンキング・タイム、10秒~!

(10秒経過)

【答え】
 発売日をずらして、両方好きなファンの出費負担の集中を軽減する。

うわ~ごめんなさい怒らないで~!(><)
でもこれ、ウソじゃなくてホントなんだもん...。

(おしまい)

*  *  *  *  *

【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『ブレードランナー/ファイナルカット』(2007年/米・香港)
★11/15(火) 22:00~00:00 NHK BSプレミアム

SF映画史上の最高傑作と言っても過言ではない、82年製作の歴史的名作。
四半世紀の時を経て、いまだ色褪せない目も眩むようなヴィジョンを
リドリー・スコット監督自らが再編集したファイナルカット。
僕は数え切れない程観ていますが、もっともっと観ないと死ねない!
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

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