運動後に息が切れるメカニズム
2012年03月21日
見ると戦いを終えたばかりの力士にインタビュー
する場面で、ほとんどの力士はゼーゼー、
ハーハー息が切れています。
相撲のような短時間で行う激しい運動は
相撲のような短時間で行う激しい運動は
酸素が無くても運動できる運動、
無酸素運動。
無酸素と言う位ですから、息を切らして酸素を
補給しなくてもできる運動なはず。
それでも息を切らしている理由は、
無酸素運動も酸素が必要だからです。
体力がないからとか、
練習不足だからではありません。
●糖や脂肪だけではエネルギーにならない
(社)日本フィットネス協会:最新・フィットネス基礎理論から抜粋
(社)日本フィットネス協会:最新・フィットネス基礎理論から抜粋
図の左上にある通り、筋肉を収縮させる直接の
エネルギーはATP。
ATPは全力で動くと約2秒分しかありません。
足りなくなったら筋肉内にあるCP(クレアチン燐酸)
足りなくなったら筋肉内にあるCP(クレアチン燐酸)
を使ってATPを再合成します。
これも全力運動の約7.7秒分。
7.7秒以上全力を出すために更にATPが必要に
7.7秒以上全力を出すために更にATPが必要に
なったら糖や脂肪をTCAサイクルというのに
入れて作り出します。
ATPを作るTCAサイクルを回すのに必要なのが
ATPを作るTCAサイクルを回すのに必要なのが
酸素。糖や脂肪があっても、
酸素がなければ筋肉は動かせません。
●無酸素運動で息切れするメカニズム
ですが、酸素の補給が追い付かなくても、
ですが、酸素の補給が追い付かなくても、
全力運動を長く続けられることがあります。
浅野克己訳:運動生理学から抜粋
上の図は運動に必要なエネルギー=ATPを作る
ために必要な酸素の量と、運動中に摂取された量を
模式化したもの。
・縦軸がエネルギー需要量。運動のために
・縦軸がエネルギー需要量。運動のために
必要なATPの量。大きな力を出すと高くなります。
・横軸が運動時間。
図をじっくり見なましょう。
・太字の四角、aがこの運動で必要なエネルギー
=ATPの総量。
・ところがaの運動中に呼吸で
・ところがaの運動中に呼吸で
酸素を補給できた量はb。
・cのATPを作ったはずの酸素が足りない。
・cとほぼ同じ量の酸素dが運動後に補給された。
ことをあらわしています。
・cのATPを作ったはずの酸素が足りない。
・cとほぼ同じ量の酸素dが運動後に補給された。
ことをあらわしています。
ATPを作るには酸素が必要です。酸素が足りなく
なったら、体に残っている酸素を使ってATPを作り
あとで酸素を補給する。
だから無酸素運動の「後」に息が切れるのです。
●無酸素運動にも酸素が必要
無酸素運動は体にある酸素を借りて、
後で補充する運動。
そのためcを酸素の借り「酸素借」、
dを返す量「酸素負債」と呼びます。
お金を借りると利子がついて、負債が増えるのは
酸素も同じ。
酸素も借りて使うと、より多くの酸素の補給が
必要になります。
持っている力の100%に近い激しい運動を行えば、
運動後、激しい呼吸になるのは生理学的な
メカニズム。
何年か前の大相撲千秋楽。優勝決定戦。
直後のインタビューで力士の息は
全く切れていませんでした。
1分以上かかった大一番だったのに...。
不思議な事もあるものです。
1分以上かかった大一番だったのに...。
不思議な事もあるものです。
コラムニスト:柴田 明
フィジカルトレーナー
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