食の色香をほんのりと

ゆく年くる年


いよいよ今年も残すところ数日。
慌ただしい中にも、新しい年への旅支度のような、
この時期ならではのわくわく感がとても好きです。

新年への旅支度を調えた大晦日の晩、
NHKの「ゆく年くる年」を見るのが恒例の楽しみです。

大晦日を迎えた全国各地の風景を見ていると、
不思議と神妙な心持ちになってきます。
NHKが切り取る夜の中に浮かび上がる神社仏閣の映像や
近所からそしてテレビから聞こえてくるゴーンという除夜の鐘が
一層しんみりとした気分にさせているのかもしれません。

そんな訳で除夜の鐘の音が輪唱のように耳に入ってくるのですが...。
毎年、今年最後の日と新年の第一日目を迎えた各地の景色や人々の表情を見ていると、
小さい島国ニッポンではあるけれど、情緒豊かな大きな日本を感じ、
東西南北まだまだ感じたいこと、触れたいこと、いっぱいあるな、と再認識させられます。

そして、これから迎える正月の食にも
情緒豊かな日本がいっぱいつまっていると感じます。

すまし仕立なのか味噌仕立なのか、丸餅なのか角餅なのか、
餅は茹でるのか焼くのかなど郷土ごとにさまざまな作り方や具材がある「雑煮」。

また「数の子(子孫繁栄)」や「田作り(五穀豊穣)」、
成長するごとに呼び名の変わる「出世魚の鰤」や、
めでたいの語呂合わせからの「鯛」など、
皆の幸福を祈り食材に言霊をのせていただく「節供料理(おせち)」のそれぞれ。
五穀豊穣・子孫繁栄・不老長寿・無病息災、幸せを祈り食べる正月の食文化、
うまし、うつくし、趣ある日本の表情のひとつと思います。

今年の「ゆく年くる年(NHK総合12/31(土)23:45~翌1/1(日)0:15)」は、
東日本大震災で被害の大きかった東北地方を中心に、
全国各地の年越しを伝えてくれるそうです。

こうして「大震災」という文字を綴るだけでも
3月11日14時46分の瞬間が目の前に現れ、胸元がぎゅっとします。
本当に色々なことに震えた2011年でした。
そんな一年を振り返り、新年を迎える時間、大晦日。
どうぞ皆さま、良いお年をお過ごしください。

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■出世魚の鰤
鰤は、関東では「ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ」、
富山では「ツバイソ→フクラギ→ガンド→ブリ」などのように、
地域によって差異はあるものの、
成長するごとに名前が変わる出世魚と呼ばれる魚のひとつです。
先日、正月を前にして、今まさに最盛期を迎えている
寒鰤の水揚げに触れたくて、富山県の氷見を訪問してきました。
寒鰤漁の聖地・氷見は、0度にも満たない気温、
ぼたん雪も舞い凍えるような寒さの中、
夜明け前から寒鰤の水揚げは始まります。
水揚げされた寒鰤はテキパキとスピーディに並べられ、
セリを通しあっという間に漁港から姿を消していきます。
海の幸を育ててくれる海、その恵みを届けてくれる漁師さんや
港で受け止める漁協スタッフや様々な人々のおかげで
私たちのところへ運ばれてくるということを目の当たりにすると、
いただく際の感謝もひとしおです。
海の恵み、大地の恵み、それらを育ててくれている多くの人々、
日々の食に関わるすべてのことへの感謝の気持ち、
いっそう大事にしていきたいと思います。
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toyama.jpg











夜明け前の富山・氷見漁港


kanburi.jpg










地元では砲弾型と呼ばれる
まるまる太った寒鰤たち


ブログサイト「馳走」にて、富山・氷見鰤観察レポートを
写真も豊富にアップしています。
コラムニスト:奥田 ここ

奥田ここ料理教室主宰

奥田ここ Twitter ID:http://twitter.com/KokoOkuda
コンタクト先:kokookuda.info@gmail.com
奥田ここBlog 「馳走」:http://chisou.typepad.jp/

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