一人広報の達人イデルミのコラム

日本は数兆円分もの食糧を捨てている!小売業界の「3分の1ルール」


2012年4月11日(水)付の毎日新聞朝刊全国版(発行部数:3,454,981部)に、
私が広報を担当しているセカンドハーベスト・ジャパンと、
セカンドハーベストが継続しておこなっているフードバンク活動や
震災支援活動について、特集記事を掲載して頂きました。

毎日新聞全国版 2012年4月11日付 14面 くらしナビ
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/education/20120411ddm013100152000c.html

 
記者の方は、この記事を仕上げるために、
量販店での食品引き取りの同行取材や、
ドヤ街での食料品配布の同行取材、シンポジウム聴講など、
たくさんの日にちと時間を費やして頂きました。
あらためて感謝申し上げます。

日本は年間2000万トンもの食糧を捨てています。
そのうち、500~900万トンが「まだ食べられる食品(食品ロス)」です。
900万トンを、単純に1キロあたり600円と考えて金額換算すると、
なんと5兆4億円にもなります。
もちろんこれは概算ですから、実際はこの数字ぴったりではないでしょう。

日本は、世界のさまざまな国からたくさんのお金を使って
食料品を輸入しておきながら、一方で、まだ食べられる大量の食品を
何兆円分も捨てているのです。日本の年間のコメ生産量が800万トン程度ですから、
年間のコメ生産量と同じだけの食べ物を廃棄しているわけです。
「日本人は米粒ひとつも残さず大切に食べる」と言われた時代は
どこかへいってしまいました。

なぜ、こんなにたくさんの食べ物を捨てなければならないのでしょう。

(1) 製造段階や流通段階、あるいは店頭で、缶詰の缶がつぶれてしまった、
      段ボール箱の隅が破れてしまったなど、包装状況の理由による場合。
(2) 賞味期限の印字を間違えてしまった、賞味期限の印字の文字が薄かったなど、
      法律上、定められた表記事項の表示ミス(規格外品)の問題。
(3) 夏向けに出していた商品が売れ残ってしまい、季節が変わってしまったなど、
      時期を限定して販売していた商品が売れずに在庫を抱えてしまった場合。
(4) 棚に並んだ商品の回転が遅くて、賞味期限が迫ってきてしまった場合。
(5) コンビニエンスストアなどの「週に何個以上販売」という条件を
      満たすことができず、定番からカットされてしまった場合。
(6) 特売や催事が終了したことにより、売れ残った場合。
(7) 倉庫に在庫を抱え過ぎて、その在庫の賞味期限が迫ってきた場合。
(8) 野菜を大量に生産したため、あるいは規格外品のため。
(9) スーパーマーケットなど小売業界で決められた
      「3分の1ルール」にそぐわない場合。

この「3分の1ルール」というのは、
「納入期限は、製造日から賞味期限までの期間の3分の1の時点までに」
「販売期限は、賞味期限の3分の2の時点まで」
というものです。
賞味期限が、残り3分の1以下のものについては、
商品としての販売を認めないということになります。
缶詰などの長期保存がきく食品の場合、賞味期限が3年以上あります。
仮に3年だったとすると、賞味期限が残り1年以上もあるにも関わらず、
売り物にならず、安売りや廃棄の対象となります。
もちろん、企業によっては、臨機応変に対応している場合もありますが、
額面通りに一律「3分の1」で対応する企業もあります。
一年以上も賞味期限が残っている食品を、はたして家庭で捨てるでしょうか。

島村菜津さんの著書「スローフードな日本!」によると、
農林水産省が野菜の標準規格を設けたのは1971年だそうです。
野菜の形、寸法、品質を統一させ、段ボールの大きさまで揃えるとのこと。
野菜が規格通りに育つと誰が考えたのでしょうか。
私が青年海外協力隊として活動したフィリピンでは、オクラを栽培し、
日本に輸出していましたが、「日本は大きさが揃わないとだめだから」と
愚痴をこぼしていました。
このような標準規格も、野菜の廃棄を増やしている要因の一つです。

フードバンク活動は、このような「まだ食べられるのに捨てられる運命にある」
「もったいない食品」を食品メーカーや量販店、農家、個人の方からお預かりし、
児童養護施設や福祉施設など、食べ物に困窮している施設などに配分する活動です。
1967年に米国で始まり、世界30カ国近くで行われています。
米国では、フードバンクに寄付すればするほど企業の税金が安くなるという
税制上の優遇措置があるため、企業も積極的に支援しており、
米国内に200以上ものフードバンク団体があります。
日本では、2000年にチャールズ・マクジルトン氏が
セカンドハーベスト・ジャパンの前身を始めたのが最初で、
日本国内には30程度のフードバンク団体があります。

フードバンクに取り組む企業側のメリットとして、廃棄コストが削減できること、
社会貢献活動の一環とみなすことができること、
本来、食べてもらうためにつくった製品を、ゴミにすることなく、
食品として食べてもらうことができること、などがあります。

廃棄コストは、物によって異なりますが、キロ単位で100円以上はかかる場合が多く、
またリサイクルやリユースを考慮して、分別の手間などがあるため、
輸送費だけで済むフードバンクは、企業にとっても有難いものです。

コミュニケーションが大事、とはいうけれど、我々は、本当に知らなければならないことを、
案外、知らないでいるのではないでしょうか。
コミュニケーションの技術やツールばかりが取り沙汰されますが、
本当に大切なのは、「何を優先して伝えるべきか」という
本質的なことではないだろうかと思います。

(リンク)
「食品ロスの削減に向けて」農林水産省総合食料局食品環境対策室 平成21年1月28日
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/forum/13th/files/shiryo1.pdf

食品ロスの削減に向けた検討会 速記録 平成20年9月5日
http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_loss/pdf/report_1.pdf

「食品小売店における納入・販売期限の設定事例について(食品小売業界からの聞き取り)」農林水産省 平成20年9月5日
http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_loss/02/pdf/data1-1.pdf

「平成22年度 食品産業における取引慣行の実態調査報告書」財団法人 食品産業センター 平成23年6月
http://www.shokusan.or.jp/sys/upload/454pdf1.pdf

「フードバンクという挑戦 貧困と飽食のあいだで」大原悦子著 岩波書店 2008年7月発行
http://amzn.to/HvAp7u

書籍「スローフードな日本!」島村菜津著 新潮社 2006年2月発行
http://amzn.to/HDTY2g
コラムニスト:井出 留美

office 3.11代表

井出留美オフィシャルブログ http://iderumi.com/
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