一人広報の達人イデルミのコラム

自分を活かし、相手も活かすコミュニケーションとは


新著だと思い、買ってびっくり。
PHP新書「伝わる・揺さぶる!文章を書く」は、山田ズーニーさんの処女作でした。

2001年11月に第一版1刷が出版されて以来、
10年後の2011年11月には「第一版第三十八刷」となっています。

山田ズーニーさんは、NHK教育テレビの「日本語なるほど塾」に出演されていた方。
人間が持つ力を活かして伸ばすサポートをすることをライフワークとなさっており、
現在は、「ほぼ日刊イトイ新聞」で、コラム「おとなの小論文教室。」を
連載していらっしゃいます。

冒頭でご紹介した書籍のエピローグ
「あなたと私が出会った意味」が興味深かったので、
概要をご紹介します。

山田ズーニーさんが、読者への問いかけとして
「あなたが好きな人にプレゼントをあげるとしたら何をあげる?」ということで、
次の3つをあげています。

1、 自分があげたいもの
2、 相手が欲しがっているもの
3、 相手のこれまでの趣味にない、新しい引き出しを開けるようなもの

 ズーニーさんご自身の体験として、
17歳向け教育誌の編集をしていたこと、
中でも表紙に力を入れていたことについて、
上記の3つを例にとりながら、語っておられます。

編集者になりたての頃は、前述の3つのうち、「1」のタイプの表紙をつくっていたそう。
しかし、それは自分の感性であり、相手(読み手)の感性ではない。
自分は気に入るけど、読者は?

それに気づき、次に相手の感性にあわせ、「2」の考え方に基づいてつくると、
好感度は前年に比べて、驚くほどアップ。

しかし、1年経たずして、ズーニーさんは行き詰まりを感じます。
相手の感性に合うものは、すでに相手の生活にあふれており、
自分が関わろうが関わるまいが、相手はそれを選んだのではないか?となると、
「自分という存在が(その仕事に)関わる意味は何だろう?」という疑問が湧いてきます。

相手の感性だけに合わせるやり方に疑問を抱いたズーニーさんは、
次に「3」のやり方にチャレンジします。
すなわち、「メッセージ性のある表紙」、
「編集部から17歳に向けてのメッセージを込めた表紙」。

すると、評価は真っ二つに分かれます。
確かに、あまり主張のない、かわいいきれいなものは万人に好まれ、
何かメッセージの込められたものは、ともすると「うざい」と言われる。
ただ、真っ二つに評価が分かれたうち、「いい」と評価した子の意見はとても深く、
読んでみると、こちらが発信したメッセージがちゃんと伝わっていることがわかります。
そこで、この路線を諦めず、読者の反応を見ながら、
じっくりじっくりコミュニケーションしていく方法を選んだそうです。

結果的に、「3」の方法をとったこの表紙は、回を追うごとに評価が伸び、
2年後には、好感度路線「2」のものよりも支持されるようになったとのこと。

これは、コミュニケーションにおいての大切なポイントを示唆していると感じます。
自己主張の「1」ばかりでなく、かといって、相手に迎合するばかりの「2」でもなく、
自分が関わることで、相手の新たな可能性を引き出してあげ、
相手からも同じように新たな気づきを得る(「3」)。

そしてこの姿勢は、出版物を作る時だけでなく、
テレビ番組を制作する際、新製品を開発する際、
あるいは大人が子どもを教育するときにも大切なことではないでしょうか。

自己を主張するばかりでなく、相手に気に入られようとおもねるのでもない姿勢。

私も、取材を受けるときには、できる限り、そのような姿勢をとろうと心がけています。
1月18日付 東京新聞に最新の取材内容「ニッポンの女子力」が掲載)

昨年12月28日に書いたコラム、「社食・学食ブーム ~産・官・学 "埋もれた宝の発掘"~

で触れた、足立区の学校給食への取り組みは、
1月10日放送のフジテレビ「とくダネ!」でとりあげられていました。

2011年12月23日付日経MJ16面でも特集されていた通り、
足立区の学校給食では、残菜をなくすために子どもの好物を増やすのではなく、
季節の旬な食材や栄養価の高い物を積極的に使用しています。
足立区全体の給食に目を配る管理栄養士の方は、学校給食を
「嫌いな物も子どもに食べてもらい、体にとって大切な物をきちんと学べる場と考えた」
とおっしゃっています。すなわち「子どもに迎合しない」ということでしょう。

一方、家庭にしろ飲食店にしろ、子どもの好む好物ばかりを取り揃えたメニューを
提供する場合もあるようです。
そういう姿勢は、相手のことを考えてあげているようで、
実は、相手をわざわざ悪い方向に向かわせてしまっている
可能性もなきにしもあらず、かもしれません。

1月16日(月)放送のNHKプロフェッショナル仕事の流儀「子どもを鍛える、母の給食」では、
"給食の鬼"と呼ばれる、北海道置戸町の、学校給食アドバイザーで管理栄養士の、
佐々木十美さんが登場します。

佐々木さんの、子どもに対する姿勢は、
「子どもにこびず、本物のおいしさを教えること」だそうです。
おそらく、そのこびない真摯な姿勢が、子どもにも親にも、
そして教育者にも評価されての番組ご登場、なのでしょう。

ほぼ日刊イトイ新聞
おとなの小論文教室。
伝わる・揺さぶる!文章を書く 
NHKプロフェッショナル仕事の流儀 
コラムニスト:井出 留美

office 3.11代表

井出留美オフィシャルブログ http://iderumi.com/
Twitter of Dr. Rumi Ide, Ph.D. : http://twitter.com/rumiide
office 3.11 http://www.office311.jp/

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