箸道 ~食と生活とおいしい生き方~

たまには、気取ってみるのもいいもんだ!


おはようございます。
「箸道」と「サイコロジック」の牟田実(むたみのる)です(^。^)

今日は、はじめに読者の皆さんの誤解を避けるため、宣言をしておきます。

「私は食通でも美食家でもありません。つまりグルメではありません。
ただおいしく食べるのが好きなだけです」

オンエアナビのレイアウトデザインが変わりました。

石川編集長、なかなか"いいね"です(^-^)。

コラムもジャンル別になり読みやすくなりました。

しかしです。なんと不肖 牟田実が "グルメ"の項目に入っているではありませんか。

グルメ情報が得られるのではないかと期待をされている読者の方がいらっしゃるとしたら
残念ながらそれはありません。
あらかじめ宣言をさせていただきます。


さて、今日は"食通"ではないけれど、"さも食通っぽく見せる"お話をしましょう。

たまには、気取ってみるのもいいもんです。

あるお寿司屋さんに行きました(今回は回る方でないお寿司屋さん)。

お寿司屋さんのカウンター席で彼女と食事をしています。
そろそろごちそうさまです。

そこで、
「板さん、あがりくれる? それとおあいそお願い」
と言いました。

すると、その板さん、威勢よく
「ありがとうございました」と伝票をカウンター越しに渡してくれ、
(店の奥に向かって)
「カウンターさん、あがりりゃんこ~」と叫びました。

まもなく熱いお茶を二つ、仲居さんが我々のところに持ってきてくれました。

通は、こういう言い方をしないとね。
うーん、我ながらかっこいい! 彼女の前で決まったな。

ちなみに、先程の「板さん、あがりくれる? それとおあいそ」を翻訳すると、
「板前さん、(食事が終わったので)お茶をくれる。それと会計もお願いします」の意です。


ところが!!! 「かっこいい」と思ったら大間違い。


「通」としては、見事な間違いを犯しています。


 あなた:え―っ!? 一体どこが? なんか言い方変だった?
 
 天の声:(ハイ思い切り変です)

 あなた:じゃ、どう言えばいいの?

 天の声:(通はこのように言います。「ごちそうさま、お茶をください。
      それと会計もお願いします」
      これに加えて、「○○が特においしかったなあ」と言えるとさらにスマート)

 あなた:これって、全く普通で食通らしくないけど・・・

 天の声:(いやいやこれがお店の人から見ると「できるなコイツ」と思わせるのです)


そもそもお寿司屋さんは、「板前」でなくて「職人」。
新聞の人材募集欄などにも「寿司職人求む」と書いてあります。
お寿司屋さんに行って、職人さんのことを「板さん」なんて呼んでいませんか?

あがり(お茶のこと)やおあいそ(会計のこと)は、符丁(隠語)といって
お店の人が使うもの。
いわゆる業界用語です。

「ザギンでヒーコ」(銀座でコーヒー)と同じようなものです。
業界外の人が言ったら変ですよね。

そんな知ったような口をきくと、寿司職人の中には
カチンときて高く請求する人がいるかもしれません・・・

「お茶」は、「お茶を引く」につながることから、お茶というのを嫌ったらしい。
この「お茶を引く」とは、芸者さん達がお客がつかずにひまでやることがないことを指します。

また「あがり」とは、花柳界(かりゅうかい)*注や遊郭で
最後に出されるお茶を「あがり花」といわれたところから
きたらしいというのが定説です。

*注 花柳界(かりゅうかい)料亭や芸者さんがいるエリアを言います。
最近はあまり見られなくなりましたが、東京でいうと、神楽坂や向島、赤坂などが有名です。

「おあいそ」は、「愛想が悪くて申し訳ありません」と
お店の人が言いながら精算するところからきていると言われています。
お客がそれを言うと「愛想が悪いんで、帰るから精算してくれ」
という意味になってしまいます。
だから、お店の人にこういう言葉を使うのは、恥かきものなんですよね。


ある老舗料亭の女将に「通な客ってどんな人ですか?」と聞いたことがあります。

「通な客の共通項が二つある」と言ってました。

一つは、わからないことがあると訊いてくること。
たとえば、
「これ、何?」
「どうやって食べるの?」


もう一つは、
「料理に対しての感想を言ってくれること」
ただ単に、「おいしかった」ではなく、
「山芋の煮物は、味がしっかり染み込んでいておいしかった。
煮込んであるのに煮崩れしていない。しかも、はしがすっと通るのはさすが」
というように具体的に言ってくれることだそうです。

時には、「塩が効きすぎ」といったことも。
しかし、こういう客が店を育ててくれるそうです。

というようなことを、彼女と話をしながら、寿司をつまんだら
きっと彼女はあなたのこと"食通"だと思ってくれます。
もちろんお店の人には聞こえないようにね・・・

「チャンネーとギロッポンにシースでも行くか」
たまに、気取って知ったかぶりをするのも、いいもんです。


最後までお読みいただきありがとうございます。
また、お会いしましょう。
コラムニスト:牟田 実

食と生活ラボ代表

食と生活ラボ代表 http://www.shoku-labo.com/
NPO法人日本箸道協会 副理事長兼事務局長 http://www.hashido.net/
Facebook: http://www.facebook.com/minoru.muta
m-muta@hashido.net

本ページはプロモーションが含まれています。