観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

新シリーズの前に是非!スパイダーマン・シリーズ屈指の傑作『2』!


新シリーズの公開も近いスパイダーマン。
現時点でのベストは、何と言ってもこの『2』!
B級ホラーの帝王、まさかのサム・ライミ監督起用の真意ここにあり。
いまいち日本人にはそのカワイさが判らない?キルスティン・ダンストも
カワイく思えちゃうからアラ不思議♪
どメジャーのヒーローアクションをオルタナ映画人が撮るとこうなる、
見事な着地点をご覧あれ。

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.32】

『スパイダーマン2』(2004年/米/監督:サム・ライミ)
★6/12(火) 深夜1:50~04:00 テレビ朝日

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最新作『アメイジング・スパイダーマン』は、
まさかのマーク・ウェブ監督起用!
なにせ『(500日)のサマー』の監督、
そして高校生のピーター・パーカー~スパイダーマン誕生秘話とくれば、
青春物語としての側面が強調されること間違いなし。
新シリーズには新シリーズならではの面白さがあることを祈って、
今週末の公開を待ちたいものです♪

がしかーし!
スパイダーマンが、かくもドル箱のシリーズになったのは、
とにもかくにもB級ホラー界の奇才:サム・ライミ監督のおかげであります。
そして、旧3部作の中でもダントツに素晴らしいのが『2』!
僕はそう断言致します。

まず、オープニング。
前作のハイライトをアメコミ風のイラストで振り返るドキドキするような出だし。
ここで観客の期待をスリリングに煽っておいて...
...宅配ピザのバイトで学費を稼ぐピーター・パーカー=スパイダーマンかいな。
しかも、とことん仕事ができないヤツ(←理由はあるにはあるんだけど^^;)

このユルさは、B級ホラーの巨匠:サム・ライミならではのオルタナ・ユーモア・センスです。
この開巻シーンに始まり、そこかしこに挿入されるユルいシーンの数々。
中でも最高なのは、
①エレベーターで一般人と乗り合わせるシーンと、
②「I'm back!(僕は帰って来たぞ~!)」から「My back...my back...(せ、背中が...)」
の2シーン。うわはははは面白すぎる!

しかし。
こうしたユルさに頬を緩ませているうちに、思わず心を鷲掴みにさせるのが、
この『2』のスンバラシイところなのです。

もちろん、CG技術を駆使した躍動感溢れるアクションシーンはお見事。
ホラー畑で培った<見せる>=<魅せる>アイディアはライミ監督ならではです。

でも、僕がぐっとくるのは、こうした映画的カタルシスの一方で
さりげなく(でもしっかりと)描かれた、主人公の成長譚なのです。

特別な能力は身についたけれど、本来主人公のピーターはナイーヴな大学生。
スパイダーマンとしての能力も、メンタルに左右されてしまうくらい危うげなもの。
凡人の僕たち同様、悩み、傷つき、迷いながらも
世の中のヒーローとしての自分、一人の愛する女性のヒーローとしての自分を
不器用に模索していく。果たしてそれは両立しうるものなのか?

トビー・マグワイアのキャスティングは、ここに至ってダントツの説得力を持ちます。
特筆すべきは、名作『明日に向かって撃て!』の主題歌「雨にぬれても」を使用し、
換骨奪胎する素晴らしいシーン。
あのシークエンスの一瞬のストップモーションに、
ライミ監督のセンスを感じたのは僕だけでしょうか。

物語は、悪役:ドクター・オクトパスとの戦いと、
前作の悪役グリーン・ゴブリンの息子である親友との因縁をタテ糸に、
女優として成功の階段を登りはじめた幼なじみのMJとの恋の行方をヨコ糸に進みます。

煮え切らないピーターに、
劇中何度となく"Jerk"(いくじなし、弱虫、ダサい的な悪口)と捨て台詞するMJ。

自信喪失に陥り、悪と戦う意味さえも失いかけたピーターに、
きっとどんな人も、誰かにとってのヒーローであり、
その誰かにとってのヒーローでありつづける責任と誇り、
それは例え自分の夢を捨ててでも大事にする価値があるものだ、と
優しく厳しく語りかけるメイおばさん。

夢=MJとの愛を捨て、世の中のヒーローであることを受け入れ
その責任と誇りを全うしようと決意したピーター=スパイダーマンに、果たしてMJは?

<ラストシーンについて触れます。未見の方はご注意下さい!>

ウェディング・ドレスのまま、結婚式を飛び出したMJ。(このシーンも良かったなあ)
両思いがかなった二人のキス・シーンにかぶさる、NYPDのパトカーのサイレン音。
また、事件だ。

"Go get them,Tiger."(あいつらをやっつけてきて、タイガー)
MJのこのラストの台詞に、世の中のヒーローである事と
愛する人のヒーローであることを両立する覚悟を改めて胸に近い、
険しい道と知りながらも、部屋の窓から飛び出してマンハッタンを跳躍するラストカット。
満点の着地です。

そして、本編中ずっと"Jerk"と呼んでいたピーターの本当の正体を知り、
"Tiger"(上手く日本語にしずらいですが、頼りになるアナタ的な?)
と背中を押してあげるMJ!
いい!いいよ!キルスティン・ダンスト!
ぶっちゃけ日本人にはイマイチその可愛さがわからない(僕だけ?)けど、
この女房っぷりは実にいい!談志師匠の「芝浜」のおかみさんみたいだぞ!

という事で、サム・ライミ監督のセンスが横溢し、
アクションとドラマがエンタメ作品としては理想的な形で楽しめる
シリーズ屈指の傑作『スパイダーマン2』、
新シリーズ開始前の予習・復習としても是非欠かさずに♪

(おしまい)

*  *  *  *  *
 
【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『ザ・ローリング・ストーンズ・シャイン・ア・ライト』(2008年/米)
★6/28(木) 深夜1:00~03:03 NHK BSプレミアム

巨匠:マーティン・スコセッシ監督が、盟友:ストーンズのライヴ映画を撮る!
これは映画ファンも音楽ファンも巻き込む大事件!
ゴダールが撮った『ワン・プラス・ワン』、
ハル・アッシュビーが撮った『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』
に次ぐ、ストーンズ映画3本目の勇姿を観よ!
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

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