観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

ベタで何が悪いっ?3Dも待ち遠しいぞ~!『タイタニック』絶対擁護論♪


みなさん、『タイタニック』はお好きですか?
アカデミー賞11部門受賞の本作も、公開からはや15年!
話題の3Dバージョンの公開(4月7日~)
※公式サイトはこちら
に先駆け、先週は久しぶりにTV放映されました。

やはり、ひと昔以上も前の映画となると、
当時の熱狂的な評価もいろいろと様変わりするようですが、
個人的には断然支持派!の僕。
今回は、畏れ多くもこの世紀の大作をとりあげてしまうという無謀な試みです。
さながら【観ずに死ねるか!】じゃなくて【観ずに沈められるか!】?

おそらく世界で一番観た人が多い映画のひとつなので、
ネタバレ御免!のコラムになっております。
無謀な試み共々、何卒ご勘弁下さい。

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.19】

『タイタニック』(1997年/米/監督:ジェームズ・キャメロン)
★3/2(土) 20:00~23:16 NHK BSプレミアム

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会社の新年会にて。
同僚のKくんと、40代の男2人で『タイタニック』について盛りあがってしまいました。
もう宴会の後半は、いかにこの映画が素晴らしいか?という話題のみを肴に痛飲(^^)

それくらい僕もKくんも、この映画が大好き。
しかし彼曰く、意外にも逆風も強いらしくって、
「え~どうしてあんなベタな映画が好きなの~?」という
アンチ『タイタニック』な友人・知人も多い事に忸怩(じくじ)たる思いがあったようでして。

そんな訳で、僕もKくんも、身近なところに同好の士を得て、
両手を広げてジャックとローズの「タイタニック」ポーズを...
...すみませんウソです^^...お互い手を取り合った次第♪←これホント。

監督:ジェームズ・キャメロンの良い所。
それは、どんなにスケールの大きな映画でも、必ず小さなところから始めて、
お話を広げるだけ広げても、また元の小さなところに帰ってくる所だなあ、と。

『ターミネーター』も『アバター』も。必ず最後は個人単位のスケールに帰結しています。
広げたら広げっぱなしになっちゃうのが普通なのですが、
キャメロンは、風呂敷の広げ方とたたみ方が両方出来る。
この1点だけでも、僕はこの監督を信頼に値すると思っています。

『タイタニック』は、あまりにも大ヒットしてしまったからかもしれないけれど、
<ベタで恥ずかしいラブストーリー>としてだけ記憶に残るには、
「MOTTAINAI!」と、昨年お亡くなりになったノーベル平和賞受賞の環境活動家、
ワンガリー・マータイさんも草葉の陰でおっしゃっているはず。

なぜなら、『タイタニック』の主題は、
切ない恋愛物語もさることながら、それ以上に、儚い夢の物語である。
そう、僕は思っているからなんです。

主人公ジャック=レオナルド・ディカプリオが体現していた、
アイルランド系移民が、渡航先のアメリカで果たせなかった夢。
あの巨大な船は、豪奢に浮かれる大金持ち達といっしょに、
貧しい彼らの夢も乗せていました。

それが見事に描かれていたのが、
ジャックがお嬢様のローズ=ケイト・ウィンスレットを連れ出し、
1等客室の豪華な料理も高価なシャンパンもない、
夢と希望と安酒だけで踊り明かした、船底の3等客室の宴のシーン。

黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』でも、
逃亡中のお姫様が貧しい村人たちの祭りに参加し、
貧しい暮らしを輝かせる「ハレとケ」を感じて生きることの素晴らしさを感じる、
そんな名シーンがあるのですが、
僕はキャメロン監督、このシーンを『タイタニック』に引用したな、と実は睨んでます。

それはともかく。
この素晴らしい船底の宴のシーンを境に、
ローズはジャックとの許されない恋へのボーダーラインを越えていきます。

豪華客船の難破・沈没という史実パニック・スペクタクルに至るまでに
こうした「個人単位の思い」を仕込むのが、キャメロン監督は本当に上手い。

逆に言えば、こうした部分に手を抜いてしまうと、
この手の映画は途端に「どっかーん!うわあああ!きゃあああ!ずばーん!...はい、おしまい。」
だけの映画に終わってしまうんです。

キャメロン作品は、どれをとっても
個人単位に小さくたたまれた風呂敷が、みるみるうちにとてつもなく大きく広がり、
それがまた元の小さな個人のサイズにたたまれていく。
その見事さを味わう映画なのかもしれません。

さて、『タイタニック』の大風呂敷は、どうたたまれたのでしょう?
ここからが僕の大好きなポイントになります。

悲劇が起こる事を知らない2人。
<お嬢様>ローズに、ジャックはいろいろな「お行儀の悪いこと」を
「君ならやれるよ!やっていいんだよ!」と言って教えてあげます。
その時は「そんな事は絶対にわたしなんかには出来ない!」と躊躇していたローズ。

しかし、そのジャック自身が、志半ばにして冷たい海の底に沈んでいってしまう。
残されたローズが、必ず助かると信じて...。

ここから、映画が描かないローズの人生が始まるんですね。
ジャックの果たせなかった夢を、自分の夢に載せ換えて、
ひとつひとつの「お行儀の悪いこと」を、約束を果たすように叶えていったであろうローズ。

2億ドル以上という前代未聞の巨費を投じ、空前のスケールで大きく広げた風呂敷は、
ローズが果たしてきた(映画が描かない)約束の数々を写した、
思い出の写真を捉えるパンショット。
その、台詞もCGも無い、何気ない小さなシーンにたたまれてゆきます。

そして、
<ジャックがくれた人生の証>として、
「わたし、こんな風に生きてきたよ」というメッセージを込めて
海の底に眠るジャックの元に、思い出の宝石を返すのです。

沈んでいく宝石に導かれるように、美しく甦ったタイタニック号、
すべての階級の人々がすれ違う大広間の階段での再会。

ジャックの分までを生きた、その長い生涯の果てに。
ラストシーンが、ローズが目を閉じる最後に見た走馬灯ならば、
その儚さに涙なしには観られません。

人生も折り返しに入った中年の僕を、
今でもグッとこさせるエヴァーグリーンな名作『タイタニック』。
やっぱり断然支持しちゃいます♪ ね?Kくん!

(おしまい)

*  *  *  *  *
 
【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『スルース』(2007年/米)
★3/5(月) 深夜2:29~4:00 日本テレビ 

1972年製作の『探偵スルース』のリメイク。
ジョセフ・L・マンキウィッツ監督のオリジナルは、ミステリ映画史上に輝く大傑作。
これを、名優&名監督のケネス・ブラナーがどう料理したか?
しかも、オリジナルにも出演した怪優:マイケル・ケインを
元は名優:ローレンス・オリヴィエが演じた役柄で再起用、
元はマイケル・ケインが演じた役柄をジュード・ロウが演じる、という
二転三転のどんでん返しが有名な映画さながらのねじれたキャスティング!
僕、オリジナル映画の大ファン&ミステリおたくなので、
ちょっとやそっとじゃ納得しませんぜ~♪ いざ、お手並み拝見!
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

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