観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

インフルエンザ流行の季節にぴったり?ゾンビ・ウイルス感染ホラー『28週後...』


みなさん、インフルエンザの予防対策はされていますか?
毎年、予防接種を欠かさない僕は、
デスクが隣のスタッフがかかっても、バンドのメンバーがかかっても、
いまだに生き延びております。

しかし。世の中には生き残れないウイルスもある?
先週は怖い怖いゾンビ・ウイルス感染ホラーの快作『29日後...』の続編である
『28週後...』が放映されました。

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.16】

『28週後...』(2007年/英=スペイン/監督:フアン・カルロス・フレスナディージョ)
★2/9(木) 13:25~15:25 テレビ東京 

-----------------------------------------------------------------------

大傑作アカデミー作品『スラムドッグ$ミリオネア』を手掛けたダニー・ボイル監督。
もうひとつの代表作『トレインスポッティング』もそうであるように、
90年代以降のブリティッシュ・ロック感覚を持った、
アート性とエンタメ性のハイレベルなマッチングが魅力の映画作家です。

普段はリアルな題材を取り上げることが多いボイル監督が珍しくホラーを作ったのが、
今回ご紹介する『28週後...』の正編となる『28日後...』。
RAGEウイルスなる病原菌に感染し、ゾンビ状態になった人間が人間を襲う、
新感覚のホラー作品でした。

先週放映された続編の『28週後...』。
ボイル自身は監督から製作総指揮にまわりましたが、
正編に負けるとも劣らないスリリングなホラーになっていて、大変面白い作品です。
正編を観たことがなくても、舞台設定だけ知っていれば単独でも十分楽しめますが、
ロンドンの街を本当に上手く"ゾンビ・タウン"化した第1作も
是非セット観ていただきたいと思います。

さて、そもそもみなさんホラー映画ってお好きですか?
このジャンルほど、観る人と観ない人が分かれる映画ジャンルも無いのかも知れません。
生理的にダメ!という方は、もちろん無理して観ない方がいいと思いますが、
嫌いではないけれど、それほど詳しくもない。
そんな僕のような映画ファンに超オススメの映画本が、去年刊行されました。

それは、『ジョジョの奇妙な冒険』で知られるマンガ家の荒木飛呂彦さんが書いた
『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』です。
詳しくはこちら

タイトルには<奇妙な>とありますが、
これは『ジョジョの奇妙な冒険』とイメージをダブらせただけ。
中身は、古今東西のホラー映画をスタイルごとに分類・紹介した、
<奇妙な>どころか実に真っ当で的を射た映画論になっているんです。

僕などはその本に取り上げられた100本のうち、一応38本は観ていましたが
未見作品を16本程鑑賞して、計54本まで積み重ねただけでも、随分詳しくなりました。

38本?結構観てるじゃん?という声も聞こえてきそうですが。
荒木氏の論考ではヒューマンドラマの『プレシャス』や『エレファント・マン』、
サスペンスの『ケープ・フィア』や『羊たちの沈黙』、
SFの『マイノリティー・リポート』までもラインアップして、
<ホラー映画>としての断面を切り取って見せてくれます。

つまり、割と映画を観る人間なら、自然とこのくらいの数にはなるんです。
そこに未見作品(僕の場合はとりあえずお薦め順に現時点で16本まで)
を加えるだけで、ホラー映画も自然に楽しめるようになってしまうという、
実にお役立ちの1冊♪

『28日後...』は、その本から興味を持って観た16作品の内の1本でした。
とにかくスピーディ。ロンドンというロケーションもいい。
そしてイギリスという島国をある種の<密室>とした設定がスリリング。
ダニー・ボイル監督のセンス溢れる、非常に洗練されたホラーに仕上がっていました。

そんな快作の続編、監督も変わった『28週後...』の出来栄えやいかに?

結論から言うと、正編に引けをとらない、期待を裏切らない出来あがり!
ダレる事なく一気に最後まで楽しめました。

特に冒頭の引き込み具合がお見事。これだけでもう1本の映画のエンディングです。
その冒頭の顛末がが思わぬ伏線となって、
『28日後...』以降、一度は沈静化したはずの29週後のロンドンに、
感染者が再び溢れかえってしまう...。

お話自体は、ウイルスに感染してゾンビ化した群集から、どうやって逃げるか?
言葉にしてしまうとミもフタも無くなってしまいますが、
優れたホラーというのは、このミもフタも無いお話を面白く見せてくれるもの。
その点で『28週後...』は、間違いなく余裕で合格点クリアの1本です。

ホラーが苦手な方でも、<ドッキリ脅かし>や<残虐表現>で怖がらせるというより、
今の今まで普通の人間だったのが、感染するとあっという間にゾンビ化して
全力疾走で人間たちを追いかける、という<スリル>で怖さを感じさせる映画ですから、
ホラーテイストのスピーディな逃亡劇として楽しめると思います。
走り回る群集のうち、誰が追いかけているゾンビで、誰が逃げている人間かわからない。
そんなゾンビ&人間混合集団パニック状態...怖いです。

欲を言えば、ラストのラストは、この手のホラーの<いかにも>な感じだったので
もう少しヒネリが欲しくもありましたが、
製作総指揮:ダニー・ボイル流のモダンなブリティッシュビート感覚が
全編に渡ってリズム・キープされた飽きの来ない2時間。
見逃した方は、是非とも第1作『28日後...』と一緒にレンタルして...

インフルエンザに感染しないように、よ~くうがいと手洗いを済ませてからご覧下さい♪

(おしまい)

*  *  *  *  *
 
【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『狂った果実』(1956年/日)
★2/15(水) 13:00~14:27 NHK BSプレミアム 

石原裕次郎の主演第1作!天才・中平康の演出!
かのフランソワ・トリュフォーを熱狂させ、
仏映画のヌーベルバーグ・ムーヴメントに多大なる影響を与え、
シネマテークに保管される日本映画第1号となった歴史的名作。
...でも、芥川賞審査員を「刺激がない」と一蹴して辞任した
芥川賞作家=石原慎太郎・東京都知事が若き日に手掛けた脚本を
「お手並み拝見」とばかりに観るも良し。
たったの17日間で撮影された、迸る才能の輝きを目撃せよ!
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

Jin Bonham名義 Twitterアカウント
http://twitter.com/jinbonham
Jin Bonham名義 映画ブログ【アンドロイドは映画館でポップコーンを食べるか?】
http://jinbonham.blog33.fc2.com/
ビクターエンタテインメント公式サイト
http://www.jvcmusic.co.jp/
担当アーティスト:KOKIA公式サイト
http://www.kokia.com/

本ページはプロモーションが含まれています。