オトナ女子的海外テレビ偏愛論★

見るたびに"白熱教室"を体感!「LAW & ORDER」にみる社会的課題のあれこれ。


"In the criminal justice system, the people are represented by two separate yet
equally important groups: the police who investigate crime and the district attorneys
who prosecute the offenders.  These are their stories."

- 刑事法体系には、等しく重要な2つの組織がある。犯罪を捜査する警察、
そして容疑者を起訴する検察である。これは彼らの物語である。-

この重厚なナレーションで始まる「LAW & ORDER」は、
1990年にアメリカで放送開始され、シーズン20まで
10年に亘りアメリカ国民に愛された社会的ドラマです。

現在、CSのスーパー!ドラマTVにて目下シーズン17が放送中ですが、
私は、脳がクリアになっている状態でこのドラマを見るようにしています。
なぜなら、見るたびにマイケル・サンデル先生の
ハーバード白熱教室での討論を見て体感したのと同じくらい頭を使って
その事件について思い巡らせることになるからです。

ドラマの前半は、警察ドラマで<事件発生><捜査>
<被疑者逮捕><事件送検>までを描き、
後半は検察ドラマとして<方針決定><捜査><訴追>
<予備審問、大陪審><起訴><罪状否認><公判> 
を描くという構図で1つのストーリーが完結します。

舞台はニューヨークなので、裁判のシーンは
ニューヨーク州の裁判制度に従って展開されています。
スーパー!ドラマTVの公式サイトにドラマを楽しむためのTIPが掲載されているので、
詳しくはこちらをご参照くださいませ。

さて今回のコラムでは、シーズン16の第6話
「虐待の連鎖」(オリジナルタイトル:Birthright)にみる
道徳的問題にちょっとフォーカスしてみたいと思います。

ストーリーの流れとしては、

①男性を刺殺したとして拘留されていた自分の子供への虐待歴を持つ
 ブラック系16歳の少女トレイシーが留置中に死亡。
②原因は、彼女が通っていた生活保護者向けの病院でうけた治療が
 持病とバッティング。病院治療および薬が彼女を死へ。
③当該病院で、トレイシーの治療にあたったホワイト系女性看護師ローズが
 子宮がん検査としながら素行が悪い女性達に対して、アメリカでは発がん性が
 高いため認められていない不妊治療(一生妊娠できない身体にする施術)を
 実施していたことが判明。ローズは、持病を知りながらトレイシーにこの
 不妊治療を実施。
④この看護師ローズは、少女トレイシーの殺人罪に問えるか否か? 

ということになろうかと思います。 以下、検察と弁護士とのBARでのやりとり。

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検察官:なぜ彼女(看護師ローズ)のような人間の弁護をするんだ?
弁護士:診療所で善行をしたし、最終判決まで推定無罪だ。トレイシー(16歳非行少女)
         のような人間がいなければ、より良い世になるとは?
検察官:思わない。
弁護士:ローズはメンゲレほど悪くないと言ったろ?
検察官:...
弁護士:彼女(ローズ)は正しいことをした。心の奥の感情では皆そう思っているはず。
         だから弁護に値する。
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※メンゲレはアウシュヴィッツ収容所の囚人に人体実験を行い
人種淘汰などをうたったドイツ人医師兼ナチス親衛隊将校のヨーゼフ・メンゲレ。

この会話から見えてくるのが、素行の悪い人間を排除していけば
世の中良くなり、それを実施してくれるヒトは擁護されるべきという
優生学の賛同者を裁判を判断する陪審員に見出そうとしているという点です。

個人的に「優生学」という言葉には正直なじみはありませんが、
その思想は、書籍、ドキュメンタリー番組、歴史などから認知していたものでした。
もし、自分がこの裁判の陪審員になっていたらどう判断するだろうかと頭をめぐらせました。
その答えは"理解できなくないけど、"道徳的にやってはいけんだろ!
それで死へ導いたならそれは罪に問われるべきなんじゃないの?"
という強固なエビデンスもなく感覚的で率直なものになってしまいます。
ドラマの中でアシスタントの検察官も陪審員について"常識的な人間なら
まともな判断をするはず"というコメントをしていました。このコメントに
照らし合わせるのであれば、私の感覚は「常識的な人間」の範疇なんだろうと
思います。というか、思いたいというのが本音です。

このドラマの中で、事実として過去の判例
(1991年に虐待した母親に対し執行猶予の条件が強制避妊)
や新聞社の社説で黒人貧困層を減らすために強制避妊が提言されたことが挙げられ、
優生学的思想が現代でも支持されているアメリカ社会的背景を垣間見せる一方、
非認可の手術を本人への説明・許可なく実施したという医療実務者の越権行為に起因する
少女の死に対し社会的制裁を考えるという非常に感慨深いテーマをこの裁判に描いています。

虐待の連鎖を止めたいという優生学に基づく正義感から生まれた行動と、
持病を患っていることを知りながらも非認可の治療を実行し死に導いた実態と、
どちらが裁判の本当の焦点となり、陪審員が公正な判断をできるように
どう検察側がハンドリングするか。あるいは弁護側が有利に進めるか。

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被告人(看護師ローズ):わかってないわ。彼女たちは自分の子を虐待するのよ。
            その危険を放置できなかった。
            この世に第2のトレイシーは不要なの。

検察官 :ほかに20人に同様の処置をした証拠を見つけた。不要なのはあなただ。
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最終判決が発表されるころには、こんな会話が繰り広げられました。

この悩ましい裁判、どんな結果になったと思いますか?
気になる方、ぜひ再放送やDVDでその答えを確かめて、脳をたっぷり刺激されてください!



LAW & ORDER(スーパー!ドラマTV公式サイト)

LAW & ORDER シーズン16放送時間L
コラムニスト:岡崎 早苗

ビクターエンタテインメント: http://www.jvcmusic.co.jp/
IABC Japan : http://www.iabc.jp/
IABC : http://www.iabc.com/

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