忘れてはいけない ー 自殺未遂で一日10人近く病院に運ばれる被災地の現状 ー
2012年03月30日
震災から一年が過ぎました。
一年を区切りに、2012年3月11日当日もしくはその前後で、
慰霊祭や震災復興イベントが開催されました。
ただ、大切な人を突然、理不尽な形で失った人にとって、
「一年」などという、そんな区切りは、何の意味も持たないでしょう。
多くの方が、「もう避難所は無くなった」と思っておられると思いますが、
震災から一年が過ぎ、まだ避難所に暮らしている方はおられます。
埼玉県加須市にある、旧騎西(きゅう・きさい)高校(2008年に閉校)は、
今も避難所として使われており、福島県双葉町の300人ほどの方が暮らしておられます。
避難所では、家族団らんのような、近い者同士だけが
家でくつろぐような暮らしやコミュニケーションが、物理的に不可能な状況です。
来週月曜日に、こちらの避難所を訪問し、どのような形の支援が最も望まれているのか、
お伺いしてきます。
被災地では、体の具合が悪くて来られる方の他に、震災で大切な人を失い、
仕事を失い、家を失い、生きる気力を失った方が、自殺をはかり、
病院に運ばれてきているケースがあります。
場所にもよりますが、一日10人近くが自殺未遂で運ばれてくる日もあるそうです。
震災からほぼ毎週、企業勤務の合間を縫って
被災地へ支援に行っている仲間から聞いた話です。
こころの問題は、ショックを受けた、その直後に出てくるとは限りません。
まわりを気遣い、「しっかりしなくては」と、感情を抑えてふるまい、
内面に隠していた感情が、半年、一年、あるいはそれ以上経って出てくる場合もあります。
「ときぐすり(時薬)」といって、時間が経過すれば悲しみは薄れる、とも言いますが、
時間が経ったからこそ、ためていた感情があふれ出てくる場合もあるでしょう。
時間が経てば経つほど、会えない悲しさがつのることだってあります。
行政の方々は、震災の後、「すべての人に平等に(対応する)」と
おっしゃっておられました。
任務としてそれは当然でしょう。ただ、「平等に」を意識するあまり、
それが足かせとなって、できなかった支援もたくさんあります。
そして原発問題が起こり、福島の方々が全国に散った今、
「すべての人へ平等に」など、無理な話です。
仮設住宅に住む人、アパートに住む人、知人の家に間借りする人、避難所に住む人 ―
すべての人に平等な支援は不可能です。
被災した人同士の間でも、お互いをうらやんだりねたんだりする状況もあると聞いています。
一方で、被災地をねらった強盗や犯罪も、震災直後から起きています。
世界から賞賛された日本の姿勢ですが、その陰では、あくどい行為も行われています。
実際、その渦中におられ、そのような行為を目の当たりにした方は、
精神的に非常なショックを受けておられ、とても、そのありのままの内容を
書いたり伝えたりすることはできないそうです。
人の毎日の暮らし、人のこころ、人のいのちは、一番大切なものです。
震災は、終わってはいません。
一人の力が集まれば助けになることも、きっとあるはずです。
福島県双葉町避難先(避難所)
埼玉県加須市(かぞし)旧騎西(きゅう・きさい)高等学校
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大震災 避難所・仮設住宅情報ガイド
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コラムニスト:井出 留美
office 3.11代表
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