全国から一日3000人のお客様を集める菓子職人がいま仕事で一番大切にしていること

2011年12月15日に放送された「カンブリア宮殿」（テレビ東京）と、
2012年2月19日に放送された「情熱大陸」（MBS毎日放送）では、
菓子職人でプランナーの小山進さんが登場しました。

完成までに３年間を費やした「小山ロール」で一躍注目を集め、
百貨店では100個用意したスイーツが10分間で売り切れ。
2011年に、世界最高峰のチョコレートの祭典で、
外国人・初出品ながら最高位のタブレット５枚を獲得という史上初の快挙を成し遂げ、
外国人ショコラティエとして最も栄誉ある「外国人最優秀ショコラティエ賞」を受賞。
神戸から離れた兵庫県三田市のパティシエ　エス　コヤマの店舗には、
全国から一日3000人ものお客さんがおとずれます。

小山進さんは、洋菓子職人の父にならい、19歳でケーキ職人に。
神戸の洋菓子店で修行し、ケーキ作りのみならず、
営業や経営についても学んだそうです。

そして36歳で独立。
2001年、TVチャンピオングランドチャンピオン大会（フランス）１ラウンド、決勝両ラウンドで味覚部門第一位を獲得し、この番組から小山ロールが生まれたとのこと。

最高峰の賞を受賞し、人を集める菓子職人は、
仕事で、何を一番大事にしているのでしょうか。

2月19日放送の「情熱大陸」に出演した小山シェフ曰く、
「"伝える"というのが、エス・コヤマの一番大切にしているところ」だそうです。

「お客さんがまわりの人に"楽しかった"と伝えてもらえるようなアクションを、ぼくらは起こしたい」と語っておられます。

これこそ、コミュニケーションの真髄と感じました。

仕事でありがちなのが「メール送っといたから」「言っといた」という、一方通行の伝達。

あるいは、自分勝手な相手への押しつけ。

そうではなく、お客さんが、自然にこころから伝えたいと思い、
自発的にまわりに伝えてくれるよう、まず自分たちがアクションを起こす、
とおっしゃっているところに共感しました。

「情熱大陸」では、入社２年目の男性が、プリンの原材料の配合を誤ってしまい、
小山シェフが彼を怒るシーンが出てきます。

「丁寧じゃないやん、こいつ」

そして、彼の上司である先輩も、小山シェフに怒鳴られます。

「人を育ててみろよ、真剣に！恥ずかしくないんか？真剣に育てろよ！」

見ている方まで、シュン・・となってしまいそうなほどの剣幕。

そんな中、ある日、小山シェフが、ふと、つぶやきます。

「あいつに伝えたいことがある」

"あいつ"とは、誕生日を迎える、プリンを失敗してしまった入社２年目の男性でした。
小山シェフは、"あいつ"に「丁寧に行動するようにしよう」と伝えたいと思い、
彼の誕生日を祝うため、自分が好きな、苺のショートケーキのホール（丸い大きなケーキ）を
つくります。誰の手も借りずに。

そして、仕事が一段落し、仲間が集まったところで、
小山シェフがつくった自作の苺ショートを運び、「誕生日おめでとう！」と言いながら、
"あいつ"を含めたスタッフの前でこう語ります。

「今年のテーマは"丁寧"やって言うてるやんか。お前、丁寧さがないやん。
でも、どっかで変わらんとあかんねん。そんで、俺は苺ショートが好きやから、
俺の好きなケーキで悪いねんけど、朝どり苺、ちゃんと自分で摘みに行って、
丁寧に味見して、全部自分で摘んで来たんや。
スポンジも全部自分で焼いて、丁寧に仕上げたんで、丁寧さを感じて、
明日から人に丁寧にしてあげてくれ。な。
自分の表現っていうのは、自分のためのようやけども、
相手が喜んでくれて、自分のレベルあがるわけやから。」

口で言うのは簡単です。
叱られた部下も、上司に対して反発心を持つかもしれない。
でも、小山シェフのように、200人を抱える組織のトップでありながら、
自らが足を運び、こころを費やし、労力をいとわない、そういう姿勢を見せられたら、
下の者は、こんなにまで自分のために、自分に良くなって欲しいがために、
こころと労力を費やしてくれたトップ（あるいは上司）に対して、
涙が出るほど心を動かされるのではないでしょうか。

社長自らが自分のために丹誠込めて作ってくれた誕生日ケーキをひとくち食べた彼は、
「ぅわぁ・・」とつぶやき、その瞬間、目に熱いものがこみ上げてきた様子で、
目頭を手で抑えていました。


カンブリア宮殿　2011年12月15日放送　小山進

情熱大陸　2012年2月19日放送　小山進

兵庫県三田（さんだ）市　パティシエエスコヤマ　シェフ紹介

小山シェフが語る、エス・小山の知られざるストーリー　「小山ロール」

産経ニュース「パティシエ　エス　コヤマ」小山進　日本の食材　正しく伝えたショコラ