下駄屋四代目ちゃきちゃき日記

「2012年、中秋の名月」


今週末、9月30日は「中秋の名月」。旧暦の8月15日にあたります。

中秋の名月を鑑賞する風習は、中国から伝わり、奈良~平安時代には宮中などで
月を眺めながら歌舞音曲の宴を開くようになったとのこと。

浅草のアミューズミュージアムという場所で、毎月「浮世絵ナイト」という講座を
開催しているのですが、今月は森山暁子さんが講師の回で「お月見」をテーマにお話されました。
江戸時代には庶民の間でもポピュラーなイベントになり、
お月見を楽しむ江戸の人々が描かれている浮世絵は多々あります。
何点か見せていただいた中でとても興味を惹かれた一枚が
広重の「新撰江戸名所 高輪廿六夜之図」。
高輪の海岸に屋台が並び、たくさんの人々が賑わうようすが描かれています。

「二十六夜待ち」というのは、1月と7月の26日に、夜中に出る月を待つという、
江戸時代には盛んに行われていた風習だそうです。
この夜、出る間際の月の光が三つに分かれ、
阿弥陀(あみだ)、観音(かんのん)、勢至(せいし)の三尊の姿が現れるという
信仰から始まったとのこと。
1月は寒いので、7月の「二十六夜待ち」に、月の出を待ちながら夜中まで
飲んだり食べたりして楽しむ、江戸庶民の納涼イベントだったようです。


ところで中秋の名月、必ずしも満月ではないってこと、ご存知でしたか?
旧暦では月の満ち欠けの周期を基本としていますから、新月を1日目として数え、
15日目が「十五夜」。
新月から満月になるまでの日数が15日になるとは限らないため、
中秋の名月が満月でないことも少なくないのです。

ちなみに今年はちょうど15日目が満月の日に当たり、中秋の名月は満月が拝めます。
晴れてくれるといいのですが・・・。
昔の人は、月が雲に隠れて見えなかったら「無月(むげつ)」、
雨が降ってしまったら「雨月(うげつ)」と呼び、見えない名月を想う風情がありました。


十五夜の月を観たら、次に観るべきは「十三夜」の月。
旧暦9月13日に当たります(2012年は10月27日)。

江戸の遊里では、十五夜と十三夜の両方を祝い、
どちらか片方しかお月見をしないのは
「片見月(かたみつき)」といって嫌われたそうです。
よくできた営業戦略だったのでしょうか(笑)。
十五夜を「芋名月」、十三夜を「豆名月」「栗名月」とも呼びます。

日本人は、月を愛でる想いがよほど強いのか、名月の前後も月を待ちます。
十六日目は「十六夜(いざよい)」。「いざよう」とはためらうことで、
十五夜より遅れて昇る月の意味。
立って待っているうちに月が出る十七日目は「立待月(たちまちづき)」。
座って待つ十八日目は「居待月(いまちづき)」。
月が昇るのが遅くなり、寝て待つのは十九日の「臥待月(ふしまちづき)」。
夜が更けるころに昇ってくる二十日目は「更待月(ふけまちづき)」。


自宅のベランダから月を観るのもよいけれど、静かな夜の庭園でのお月見もまたよし。
うちの近所にある向島百花園では、9/29(土)~10/1(月)、
開園時間を延長し、野点やお琴の演奏が楽しめます。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~bokutei/ibent1.htm

浜離宮恩賜庭園は「将軍の御庭で中秋の名月を愛でる」と題して開園時間が延長されます。
ほかにも、東京タワーの「お月見階段ウォーク」というユニークな企画や、
横浜三渓園の観月会など、都内や近県でもお月見を楽しめるイベントがいろいろあります。


日本では、うさぎが餅をついているように見ますが、
外国では女性の顔やカニ、ワニ、ライオンなど、ずいぶんいろんな見え方があるようです。
うさぎに見えるのは、月の火山から流れ出した溶岩が黒く固まった、
海と呼ばれる場所なんだそうです(東京新聞2012.9.24の記事より)。


「月月に月見る月は多けれど 月見る月はこの月の月」 詠み人知らず

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コラムニスト:富田 里枝

浅草の老舗和装履物 辻屋本店

あさくさ辻屋本店「下駄屋.jp
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