一人広報の達人イデルミのコラム

「最後から二番目の恋」ヒットの背景 & 出演者インタビュー

フジテレビ「最後から二番目の恋」が終わりました。毎回、終わるたびに次が見たくなり、いつの間にかドラマの世界に引き込まれ、毎週木曜日の夜を楽しみにしておられた方もいるでしょう。

このドラマが魅力的なものになったのは、脚本が、岡田惠和(よしかず)さんだったというのも大きいと思います。2011年のNHK連続テレビ小説「おひさま」、テレビ朝日「めぞん一刻」(2007)、連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001、2003、2004、2007)、フジテレビ「ビーチボーイズ」(1997)など、聞けば誰もが「ああ、知ってる」というドラマの脚本を手がけてこられました。しかも、どれも「ああ、面白かったなあ」「また見たいなあ」と思い出される作品ばかりです。

人それぞれ価値観が違うので、同じものを見ても、人それぞれに違った見方や感じ方があると思いますが、自分なりに、このドラマが、今の時代の40代世代を魅了した要素を考えてみました。

第一に、鎌倉が舞台であること。バブル期に舞台となった六本木でもなく、オフィス街の丸の内でもなく、鎌倉。「住みたい街」調査では、必ず上位にランクインする街です。観光地でありながら住宅地でもあり、山や海などの自然に囲まれ、寺社や神社など、古くからの建築物がある街。憧れの街です。ドラマに出てくるのは、世界一、乗降客数の多い新宿駅のような人があふれる駅ではなく、江ノ電の、小さな極楽寺駅。東日本大震災の影響や、地域の振興や活性化のひとつとして、地方ブランドを応援する機運もあり、なんでもかんでも東京信奉というのは、むしろ古くなってきたと感じます。

第二に、主人公が、かっこ悪い部分やダメな部分、イケてない部分もさらけ出しているところ。ソーシャルメディアの影響もあり、かつては、「課長」「部長」など、職場の役職を演じるペルソナ(仮面)だけで生きられた人も、素の自分をさらけ出す機会、さらけ出さざるを得ない機会が増えてきました。企業のトップもそうでない人も、仕事の成果のみならず、人間性で評価される部分が以前より多くなってきました。一般論や、教科書通りのことを言っても共感されないし、人の心に響かない。自分の素のままを出すことが大事。となると、かっこいい部分だけ見せてはいられないし、むしろ、そんなのは嘘くさい。人間、四六時中かっこよくはいられないからです。

女性の場合、他人からは、二元論で評価される場面も多いかもしれません。たとえば、結婚しているか、していないか。子どもがいるか、いないか。仕事をしているか、していないか。正社員か、派遣社員か。若いか、そうでないか。などなど・・・週刊誌のAERA(アエラ)最新号(2012年4月2日号)では、一定の年収で線を引き、その下を「貧困女子」、上を「富裕女子」として二グループに分けて論じる「貧困女子と富裕女子の限界」という特集が組まれています。金を持っているかいないか。恋人がいるかいないか、など・・

主人公の一人、吉野千明を演じた小泉今日子さんは、そういう視点から見れば、以前、結婚されたけど、その後、離婚して今は独身で、子どももいない。だけど、結婚してるかしてないかとか、離婚したとか、子どもがいないとか、そんなこと、人の魅力に関係ないんじゃないの。という、世間からの好意的な評価が如実に表れたのが、このドラマだったと思います。小泉今日子さんと同時期にデビューした早見優さん、石川秀美さん、松本伊代さん、堀ちえみさんらは、いずれも主婦としての立場を優先してこられた中、小泉今日子さんは、紆余曲折を経て、芸能界でのキャリアをずっと続けてきたという点で、仕事を辞めずに頑張ってきた40代女性から見ても、共感を得やすいと感じます。

第三に、40~50代が憧れる若々しさや、年下との恋愛などが描かれていること。

本日3月28日付日経MJ(日経流通新聞)2面「1000人の家計簿」に、アンチエイジングに関する調査結果が掲載されています。日本経済新聞社の調査で、実年齢より若く見られたい人が全体の65%で、女性では、約8割を占めたとのこと。抗加齢(アンチエイジング)で関心がある体の部位は、女性では肌(82.6%)が1位、髪(59.9%)が2位など、体の部位に関しては、女性の回答率は、男性より10ポイント高い項目が目立ったそうです。

小泉今日子さんは、このドラマの撮影中、2012年2月4日に46歳の誕生日を迎えられました。ひと昔前の46歳といえば、いかにも「おばさん」で「所帯染みた」イメージがあったと思いますが、彼女は、肌もつやつやして、ヘアスタイルも若々しく、かといって、無理して若作りしている風でもなく、同世代の女性が「あんなふうになりたい」と憧れる存在ではないかと思います。

第四に、さりげない形で、昭和の古きよき時代の要素を取り込んでいること。千明が、長倉和平役の中井貴一さんと、毎回、容赦ない言葉をかけあうバトルを、思わずクスッと笑いながら見ていた方も多いでしょう。二人は、言ってみれば、赤の他人に過ぎません。今の世の中で、赤の他人同士どころか、家族同士や職場ですら、あんなふうに言い合うシーンは少なく、メールでのコミュニケーションが大きな部分を占めています。和平の部下、大橋知美(佐津川愛美)が、「私もあんな風に喧嘩してみたい」と言うセリフがありますが、若いメール世代にとって、和平と千明のように、感情をぶつけ合い、それでいて険悪にならない関係、というのは、ある意味、新鮮でうらやましくもあるのではないでしょうか。

他人の家に、遠慮なく上がりこんだり、一緒に食事したりすることも、首都圏では少なくなっています。お茶会やホームパーティなど、そういう会を意識して「わざわざ」セッティグする機会はあるでしょうが、あんなふうに、ごく自然な形でふらっと人の家に上がりこむ、上がり込める関係も、以前よりずっと少なくなっているでしょう。メールのなかった時代、人々が助け合っていた時代に当たり前のように存在していた人との生の触れ合いが、このドラマには盛り込まれています。

第五に、何も変わらないような日常を描きながらも、登場人物がすべて変化を遂げていること。劇的だったのは、夫や息子と険悪になり、家出していた水谷典子(飯島直子)が、夫の広行(浅野和之)と、よりを戻すこと。(あまりに極端な結末で、個人的には、やや腰が引けましたが・・・)内気で家にこもっていた長倉万理子(内田有紀)は、千明の職場を手伝うことで仕事の面白さに目覚め、彼女が内に秘めていた才能を発揮し始めます。万理子の双子の兄弟、真平(坂口憲二)は、真剣に恋なんてしたことなかったのに、生まれて初めて恋愛に落ちる。その後、失恋も味わいますが、失恋を味わえたことにすら、感謝する。主人公の和平は、最初は他人を家に入れることに嫌悪感を抱きますが、そのかたくなな感情も、だんだんとほどけていきます。

主人公の千明が誕生日を迎え、長倉家で誕生日ケーキにろうそくを灯してお祝いしてもらっているときに、年齢の数だけ、ぎっしりと立てたろうそくに「恥ずかしい」「10歳分は1本でいいのに・・・」と不平をこぼし、それに対して和平が言うセリフが秀逸です。
「なんで恥ずかしいんですか?年をとればとるだけめでたいことなんだ。胸はっていてくださいよ、あなたらしくない」
「このろうそくの数は、これだけあなたが頑張ってきたっていう証なんです。10年を太いの1本なんて、おおざっぱなことできませんよ」
年々増えていく年齢をうらめしく思っている40代女性にとって、同じように年を重ねてきた男性に言われ、これほど励まされるセリフもないでしょう(笑)年をとることに、最初は否定的だった千明も、最後の方では、何かを利用して自分を「上げよう」としたりする必要もなく、自分のままで生きればいいんだな、むしろ重ねてきた年齢は勲章なんだ、という感情に変わっていったのでは、と想像します。

本日3月28日付朝日新聞オピニオン面「CM天気図」で、コラムニストの天野祐吉さんが、サントリーのビールのTVCFのセリフをピックアップしておられました。

「人と人をつなぎ、しあわせを後押しして、何気ない日々を輝かせる。それが本当のビールだ」

以前のように、ストレスがたまるまで無理してまで働き、ストレス解消のために、浴びるほど、ビールを飲む。もうそんな時代じゃない。

「最後から二番目の恋」は、何気ない日々の中にある幸せや、人との結びつきを描いたドラマ。

東日本大震災を経て、日本人の価値観は変化しています。
もう、形だけのものは要らない。
何も持たない、裸のままの自分になったときに残るのは何か。
年を経るごとに衰える体力や様々なこと。それでも、そんな自分を愛してあげたい。

何気ない日々を送ることができること。
それが、どんなに幸せなことか。

何気ない日々に幸せを見つけることを忘れてはいないか。

年を重ねるのは恥ずかしいことじゃない。
それは、あなたが頑張ってきた証。素敵なこと。

時代の背景をふまえ、ターゲットとなる層の心を惹きつける、素敵なドラマでした。

「最後から二番目の恋」
インタビューVol.1   吉野千明役 小泉今日子さん × 長倉和平役 中井貴一さん (前編)
http://www.fujitv.co.jp/nibanmeno_koi/interview/index01.html
インタビューVol.2 吉野千明役 小泉今日子さん × 長倉和平役 中井貴一さん(後編)
http://www.fujitv.co.jp/nibanmeno_koi/interview/index02.html
インタビューVol.3 長倉真平役 坂口憲二さん
http://www.fujitv.co.jp/nibanmeno_koi/interview/index03.html
インタビューVol.4 長倉万理子役 内田有紀さん
http://www.fujitv.co.jp/nibanmeno_koi/interview/index04.html
インタビューVol.5 水谷典子役 飯島直子さん
http://www.fujitv.co.jp/nibanmeno_koi/interview/index05.html
インタビューVol.6 長倉えりな役 白本彩奈さん
http://www.fujitv.co.jp/nibanmeno_koi/interview/index06.html

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主題歌「How Beautiful you are 」by 浜崎あゆみ
コラムニスト:井出 留美

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