下駄屋四代目ちゃきちゃき日記

江戸の年迎え


今年もいよいよ残すところあとわずかとなりました。
いま頃、家の中の大掃除に追われている方も多いのでは?


先日、「江戸文化と古典芸能と着物が好き」という仲間が集まってお遊びの会を作り、
ちょっとしたイベントを開きました。
テーマは「江戸の年迎え」。
メンバーの1人、歌舞伎と浮世絵が専門の研究者である森山暁子さんが、
スクリーンに映した浮世絵を見ながら江戸時代の風俗を解説しました。


当時は12月13日が「煤払い」と決まっていたそうで、この日は江戸城からはじまり、
大名、旗本から庶民にいたるまで、江戸中で大掃除をしたそうです。
炊事に薪や炭を使い、明かりには油を使った時代ですから、
実際、煤はずいぶんたまったのでしょうが、新年を迎えるための、
一種のお祭りのようなものであったらしい。

商家などでは、使用人、出入りの鳶や職人達が揃って煤払いをし、
終わるとみんなで蕎麦などを食べ、そしてなぜか、
誰かれ構わず胴上げをする風習があったのだとか。
おもしろいですねぇ。

そしてお手伝いにきてくれた人達には酒や肴が振る舞われたのですが、
その時に欠かせない食べ物が「鯨汁」。
寒い冬の大掃除の後に、油の多い鯨汁はもってこいの食べ物だったのかも。


イベントの後、浅草・西参道の「宮戸川」で交流会を行ったのですが、
店主にお願いして、特別に鯨汁を作っていただきました。
根菜たっぷりの中に、薄く切った鯨の皮が入っている具沢山の汁もので、
意外にあっさり、おいしくいただきました。

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鯨汁は北海道や新潟、山形など寒い地方の郷土料理として
今も食されているようですが、浅草の「駒形どぜう」(http://www.dozeu.com/)でも
鯨汁を食べられると聞き、お昼時に行ってみました。
180余年前に二代目が、どじょうが一番小さい魚なら、
一番大きな魚を売ってみたいということで、くじら料理も始めたのだとか...。
「宮戸川」ではしょうゆ味でしたが、「駒形どぜう」のくじら汁は
白味噌と酒粕のブレンドで、とてもコクのあるお味。


さて江戸時代に話は戻り...煤払いが終わると正月の準備のために、
「歳の市」で必要なものを買いそろえます。
歳の市は今では「羽子板市」となり、毎年12月17~19日に
浅草寺境内で羽子板市が行われ、今年もたいへん賑いました。

当時は注連飾りや神棚、凧など正月用品のほか、海老や鯛、昆布、
まな板や桶、さらには縁起物の植木まで売られていました。
元旦の朝にその年初めて汲む水を若水(わかみず)といい、
神前に供えるのは神聖な儀式。若水を汲む桶は神聖なものでなくてはならず、
毎年、歳の市で買って新調するのが習わしだったのだとか。


江戸の町では年末の風物詩として'八百八町杵の音'といわれた「餅つき」がありました。
大きな商家では自宅や店先で、餅つき屋に頼んで派手に餅つきをし、
一般の民家では、餅菓子屋に注文するか、
'賃餅'といって餅つき人足に出向いてもらったそうです。


新年に向けて、町中で大掃除をし、新しいものを買いそろえ、餅をつく。
江戸の人達は新年を迎えるための気構えが、
今よりずっと特別で、大切にしていたのだなぁと思います。


江戸時代まで遡らずとも、履物屋もちょっと昔までは
年末がもっとも忙しい時期だったそうです(ちなみに今は夏が繁忙期)。
いうまでもなく、新年に履物を新調する人が圧倒的に多かったから。
40年位前にうちで働いてくれていた人から聞いた話では、
大晦日は店内はお客さまでいっぱいで身動きとれないほどで、
商品や代金を手から手へ、バトンのように渡したのだとか...。

お正月には新しい草履や下駄。そんな習慣をまた広めたいものです^^;
コラムニスト:富田 里枝

浅草の老舗和装履物 辻屋本店

あさくさ辻屋本店「下駄屋.jp
富田里枝twitterアカウント

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