「東京スカイツリー」お膝元は、ものづくりの町
2012年01月17日
遅ればせながら、2012年最初の記事になります。
今年も東京の下町地区より地元ならではの話題を発信していきますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
いよいよ今年5月22日に開業する「東京スカイツリー」。
予測によれば「完成後はツリーだけで年間552万人が訪れ、
年間880億円の経済効果が生まれる」(2011年7月30日付 日刊工業新聞)らしいです。
我が町、浅草もその恩恵に預かっていることは間違いないと思います。
うちのお店もお陰様でこのお正月はとくに忙しく、一方でお昼ごはんを食べようにも、
どの店も行列で、嬉しい半面困ったものでした。
1月12日の東京新聞の記事によれば、
「正月三が日に浅草寺へ初詣に訪れた参拝客は275万人。前年の269万人を上回り、
統計が残っている1974年以降の過去最多を更新した」とのこと。
東日本大震災、原発事故という未曽有の災禍が影響したとともに、
やはり東京スカイツリーの影響ではないか、とありました。
近隣のホテルが「スカイツリーを眺望できる部屋」をアピールしていたり、
不動産関連では「墨田区・台東区のマンション供給が活発化している」など、
便乗する業界もいろいろあるようですし、書店にはスカイツリーを表紙にした
下町観光の本が並んでいます。
周辺地域が、ますます盛り上がることは間違いなさそうです。
さて、東京スカイツリーのお膝元、墨田区はどんな所かといえば...。
向島、本所などは江戸時代から栄え、永井荷風の『墨東綺譚』に描かれる地域。
関東大震災や戦災で当時の面影を残すものはほとんどありませんが、
向島には花柳界があり、料亭の並ぶ界隈を芸者さんが行き来する、
どことなく風情のある町です。
また、衣服、かばん、靴、金属加工、プラスチック・ゴム製品等を中心とした
小規模な製造業が集まる「ものづくりの町」でもあります。
その背景には、明治時代、河川に囲まれた立地条件を活かして
紡績、精密工業、石けん、製靴が盛んになり、
大正時代には輸出向けの玩具、ゴム製造が活発になった歴史があります。
現在では、「小さな博物館」「すみだ工房ショップ」「すみだマイスター」を通じて、
「墨田区3M(スリーエム)運動」をPRしているそうです。
これは、工場や民家の一部を博物館として公開したり、
製造と販売が一体化した新しいスタイルの店舗づくりを推進したり、
職人(マイスター)の技術をPRするものとか。
http://www.techno-city.sumida.tokyo.jp/3m/index.html
伝統工芸関連も多く、藍染や押絵羽子板、べっ甲、足袋など昔ながらの製法を守り、
伝えている職人さんたちが多く暮らしています。
昔から、ここで作られる伝統工芸品が、
お隣の浅草や上野の商店で売られているというわけです。
墨田区と台東区の職人さんは交流もあり、私の家業である辻屋本店では今年、
「スカイツリーお膝元の職人さんのお話を聞く」という趣旨のイベントを企画しています。
題して「職人さんに聞いてみよう!」
2年前より続けている「あさくさ和装塾」で2012年のテーマとして開催する予定です。
まず初回には、錺簪(かざりかんざし)の職人さんと、
市松人形の職人さんに来ていただくことになりました。
http://www.getaya.jp/wasoujuku/201202/annai.html
次回以降はただいま企画中ですが、スカイツリー観光といっしょに、
東京下町ならではの伝統工芸を皆さんに知っていただき、
この地域の魅力をより高めていけたらと思っています。
コラムニスト:富田 里枝
浅草の老舗和装履物 辻屋本店
あさくさ辻屋本店「下駄屋.jp」
富田里枝twitterアカウント