観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

熱いのはオリンピックだけじゃない!熱過ぎる火災現場を舞台に熱い人間ドラマを描き切った『バックドラフト』に熱くなれ!?


いよいよ大詰めのロンドン五輪!
映画観てる場合じゃないって気もしますが、それじゃあコラムが成り立たない。
今回取り上げるのは、アメリカで最も尊敬される職業=消防士を描いた大ヒット作。
限界を超えた戦いで感動を与えてくれるという意味では、
オリンピックのアスリート達にも通じる感動を与えてくれる、
市井のヒーロー達の物語です。

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.35】

『バックドラフト』(1991年/米/監督:ロン・ハワード)
★7/27(金) 深夜0:00~2:20 NHK BSプレミアム

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「ハリウッド大作」はお好きですか?
...なんて、ずいぶんざっくりした質問ですみません。

ここで敢えて「ハリウッド映画」ではなく「ハリウッド大作」とさせていただいたのは、
映画の都=ハリウッドの数あるテイストのうち、いわゆる「大作」については
けっこう好き嫌いが分かれるよなあ、と思ったからなのです。

作家の個性や斬新な発想が発露しやすい低予算やインディペンデント系の映画
(逆にそうした一点突破のポイントに乏しければ、このタイプは成功しないのですが)
に比べ、
芳醇な予算と集客力のあるキャスティング/スタッフィングに恵まれた「大作」は、
スタート時点で既に勝組というかシード権のようなスタンスを持っているのは確か。
また、映画ファンだけではなく全方位的に観客を満足させるため、
(そうやってたくさんお客さんを集めないと赤字になっちゃいますから)
ある主"最大公約数"的な物語にならざるを得ないという宿命を背負っています。

それがやや大味に感じられる草食系の方はアンチ・ハリウッド傾向が強く、
逆にヒット大好き!わかりやすいの大歓迎!という肉食系の方は万歳!ハリウッド。
もちろん僕のように映画だったら何でも好き!という雑食系の方もたくさんいらっしゃる。
いやあ映画ってホント、いいもんですね。では、サイナラ、サイナラ、サイナラ...。
って水野晴郎さん&淀川長治さんの名台詞をパクってる場合じゃなくて。

話を戻すと、ハリウッド大作っていうのは
批評の対象にはなりづらいにも関わらず、絶対的な成功を求められている。
それって、金メダルじゃないと許されない日本柔道界みたいなもんだよなあ、と
無理くり時事ネタに結び付けたりしております。

で。柔道同様、やっぱり金メダルを獲るっていうのは大変。約束できない。
恵まれた環境のハリウッド大作も、常勝必達ゆえの苦しみがあるんだろうなあと思う訳です。

1991年の大ヒット作『バックドラフト』は、
監督のロン・ハワードに始まり、カート・ラッセル!ウィリアム・ボールドウィン!
スコット・グレン!ジェニファー・ジェイソン・リー!レベッカ・デモーネイ!
ドナルド・サザーランド!そしてロバート・デ・ニーロ!
という、スタッフもキャストも「金メダル獲らないと帰れない」ドリームチーム。
そこをちゃんと結果に結びつけたのは、さすがというか立派です。

お話の骨組みはとにかく鉄板。
アメリカで最も尊敬される職業=消防士を主人公に
父と子、兄弟、仲間。そのかけがえのない絆をがっちり骨太に描いていきます。

そこでポイントとなる切り口は、「誇り」。これ、アメリカの方は弱いですね。
立派な消防士の後を受け継いだ息子の誇り。
素晴らしい兄を、素晴らしい弟を持った兄弟の誇り。
命をかけた仕事をする仲間たちの誇り。
そして、正しい事を信じ、不正を許さない人間としての誇り。
連続放火事件というサスペンスと両立させながら、この「誇りの物語」は進みます。

こうした作品は、「ハリウッド大作」がやはり一番その力を発揮するパターン。
ドリームチームを率いて、見事な采配を果たしたロン・ハワードは、やはり名将です。

先ほど、綺羅星のような出演者を列挙しましたが、
名将のもうひとつの功績、それは主人公たちの真の敵=炎を
メインキャストにすえた所。

ジョージ・ルーカスの特撮工房=ILMの技術の粋を尽くし、
まるで野蛮な生き物のように変幻自在の表情を見せる炎。
この真に迫る迫力と映画ならではのデフォルメなくしては
『バックドラフト』の「誇りの物語」がこれほどの説得力を生むことはなかったでしょう。
クライマックスの化学工場のシーンは間違いなく映画史に残るものですが、
そこでの主役は紛れも無く、「炎」それ自体です。

その後、映画のテーマ曲はフジテレビの大ヒット番組『料理の鉄人』に使われてしまい、
以来あの曲流れてくると、どうしても「美味しゅうございます」(by 岸朝子)
と言いたくなってしまう僕ですが(^^;)
しかし『料理の鉄人』も放送終了から早13年。そろそろすり込み効果も薄れたところで、
この"映画の鉄人"たちの金メダル級の腕前に、
再度舌鼓をうってみてはいかがでしょう?面白うございますよ♪

(おしまい)

*  *  *  *  *
 
【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『殺しのドレス』(1980年/米)
★8/6(月) 13:25~15:25 テレビ東京

個人的にとっても大好きなブライアン・デ・パルマ監督。
今も尚、題材を選ばず様々な映画をバリバリ撮り続けていますが、
70年代~80年代初頭のちょっとよじれたサスペンスやホラー系が一番面白い!
反則ギリギリのこの映画も、そんな代表作のひとつ。必見です。
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

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