観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

年を重ねて観るたびに芳醇な味わい。~唯一無二の大人向けジブリ作品『紅の豚』~


もう~!日本テレビさんが連打するもんだから!!...すみません。
今週の【観ずシネ】は、先週に続いて、またしても宮崎作品になってしまいました。
年を重ねるにつれて不思議とどんどんお気に入り度が増していく、
という、ジブリ作品の中でも異色(そして僕のフェイバリット!)の作品です。
第一次世界大戦後の動乱の時代。
美しいイタリア・アドリア海を舞台に繰り広げられる愛と友情と誇りの物語。
オンエアナビをご覧の仕事人のみなさんにこそ改めて観て欲しい、
ロマンティックな大人のファンタジーです♪

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.24】

『紅の豚』(1992年/日/監督:宮崎 駿)
★4/6(金) 21:00~22:54 日本テレビ 

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「カッコイイとは、こういうことさ。」という糸井重里のキャッチコピー。
あるいは、「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ。」という名台詞。
そして、加藤登紀子のシャンソンの主題歌。
公開当時も「これまでの宮崎作品とは何かが違うなあ。しかも主役が豚さん?」
という印象を持たれた方も多いのではないでしょうか。

それが、僕の個人的ジブリNO.1作品、『紅の豚』なんです。

『風の谷のナウシカ』『天空の城のラピュタ』『となりのトトロ』『魔女の宅急便』

その後の幾世代にも渡って、日本いや世界中の子供たちを楽しませる事になる、
アニメ史上に燦然と輝く作品を、次々と作っては大ヒットさせてきた宮崎駿監督。
全国民待望の期待を背負って登場した『紅の豚』は、まさかの大人向けでした。

もちろん、作品としての出来は素晴らしく、前作『魔女の宅急便』を凌いで
当時の劇場用アニメ映画の興行成績日本記録を更新する大ヒット。
第一次世界大戦後の動乱の時代。
美しいイタリア・アドリア海を舞台に繰り広げられる愛と友情と誇りの物語は、
魅力的なキャラ、美しい絵、レトロな飛行艇の見事な動きとあいまって
子供でも、初見でも、十分に楽しめる名作です。

しかし、この作品の真価は、
年齢と共に経年変化する味わいの豊かさにある。僕はそう思うのです。
この感覚は、他の宮崎作品にはどれにも見当たりません。
 
1992年、当時25歳で観た時も、もちろん感動はしました。
ところが、それから数年が経過し、
もう30歳になるかならないかの頃でしょうか。
結婚して子供も生まれ、
仕事的にも、まだまだ新人臭さの抜けない公開当時のアマちゃんから、
それなりの経験を経て中堅になろうかという頃。

テレビか何かで、僕はもう一度『紅の豚』に再会します。

その時の感動が、1度目の感動と全く質が違ったんですね。
これは、ジブリ作品では初めての経験でした。

では一体ほかとどこが違うのか?
それは、「人生を描いている唯一の宮崎作品」だから。
僕は、そう思うのです。

人生。それは、その人の生き様の歴史です。
男も女も、誰しもがそれぞれの信念と生き様を持っている。
周りが気付いてくれようとくれまいと、関係ない。
その価値は、自分の心の中の誇りだけが知っている。

いぶし銀の森山周一郎、マダムな加藤登紀子。
それぞれが声を演じたポルコやジーナだけでなく、
ライバルのカーチスや空中海賊のボスたちも、
それぞれに誇りを持って自分の生き様を貫いているからこそ、
彼らは大人の憧れる、
「カッコイイとは、こういうことさ。」を体現する、
魅力溢れるキャラクターになっているのだと思います。

自分の生き様に対する思いは、当然、年を重ねるにつれて重要度を増していくもの。

僕がこの映画と2度目の再会を果たした時に感じた、感動の質の違い。
あれはきっと、その間の数年間が僕にもたらした人生経験が
まるで同じだけの時間を樽で寝かせたウイスキーのように
味わいの深みとなって現れたものなんだろうなあ、と。

以来僕は、1年に1度はこの映画に触れ、
1年毎の味わいの熟成変化を楽しむようになったんです。

公開から20年後の今年、45歳になる僕が観る『紅の豚』の味は、
20年物のウイスキーのような味わい、
今年だけのプレミアムな味わいとなっていました。

さて、本作でレトロな乗り物シュミと共に
自らの人生観や憧れの生き様を描ききったと思ったのでしょうか。
次に宮崎監督が世に送り出したのが、あの大作『もののけ姫』でした。
以降、『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』
と続く作品群を考えると、
宮崎監督がシュミに徹し、唯一「人生」を描いた『紅の豚』の持つ、
独自の立ち居地が際立ってくるのです。

「世間的に言う宮崎作品を作らねぇ宮崎駿は、ただの宮崎駿だ。」
その思いはわからなくもないけれど。
「ただの宮崎駿」が作ったオヤジのジブリも、もう一度観てみたい。
そんなオヤジは僕だけでしょうか?

劇場公開時の20年前には小学生だった観客も、今では立派な社会人。
仕事場でも中核を担う存在に成長し、
様々な人生経験と共に、自分の生き様を貫いてきたことでしょう。
そんな方に是非とも。
2度目・3度目の『紅の豚』との再会をお薦め致します♪

(おしまい)

*  *  *  *  *
 
【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『ディック&ジェーン/復讐は最高!』(2005年/米)
★4/14(土) 深夜3:15~4:50 テレビ東京

土曜の深夜は、肩の凝らないコメディ映画がぴったり。
そんな訳で、僕も初見ですが、怪(快?)優:ジム・キャリーと
ティア・レオーニ(←『ジュラシック・パーク3』の彼女、良かったなあ♪)
が夫婦役でコンビを組んだ『おかしな泥棒 ディック&ジェーン』のリメイク作品を
ピックアップしてみました。果たして笑い死ねるか?楽しみだな~♪
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

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