観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

天下御免の名作をネタによもやま話、『ルパン三世 カリオストロの城』♪


初公開以来33年!
未だ人気が衰える事を知らない日本アニメ史上に残る大傑作を
畏れ多くもネタにしようとする暴挙。
どうか何卒くれぐれもご勘弁ご容赦下さいませ...(でも中身はいたって真面目です...)

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.23】

『ルパン三世/カリオストロの城』(1979年/日/監督:宮崎 駿)
★3/29(金) 21:00~23:04 日本テレビ 
 
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27年ぶりのTVシリーズ復活『ルパン三世 峰不二子という女』も話題ですが、
ルパンと言えばファーストTVシリーズ、「宮崎駿の青ジャケットのルパン!」
というファンも多いかと存じます。

「いやいや、視聴率不振で高畑勲&宮崎駿にバトンタッチする前、
大隅正秋が演出した大人向けのルパンこそが本物なのだ!」

という通な方もいらっしゃると思いますが、
(そして、僕もそれには激しく同意するところですが)
やはり、この名キャラクターを40年以上の長きに渡って不滅のものにしたのは、
高畑&宮崎コンビ、
とりわけ劇場版第2作『カリオストロの城』で青ジャケットのルパンを復帰させ、
良くも悪くも「宮崎色が強すぎる」とも言われる大傑作をものにした
宮崎駿監督の功績が大きいことに、異存のある方はいないでしょう。

また、可憐なお姫様=クラリスによって、
「萌え」なんていう言葉の影も形も無かった33年前に、
「萌え」の何たるかを、硬派の石川五ヱ門だけでなく、
日本中の男子の深層心理に植えつけてしまった。
『カリオストロの城』は、そんな罪深き(?)名作でもあるのです。

僕がこの作品を初めて観たのは、33年前の封切り時、小学校5年生の時でした。
冒頭から「これでもか!」と続く名シーンのオンパレード。
緩急自在な宮崎演出の白眉。長編の映画版ならではの大仕掛け。

こんなシロモノを11歳で目の前の大スクリーンで観せられた日にゃあ、ご同輩。
間違いなく撃沈です。
「ふん、子供向けのアニメだろう?」とタカをくくって付き添っていた、
うちの親父(当時の推定年齢=41歳)は?と言えば...
......はい、同じく撃沈してました(^^)。

子供も大人も魅了してしまう『カリオストロの城』のルパン。
その魅力は何なのでしょう?

それは、僕ごときが包括できるものではないけれど。
当時のパンフレットには宮崎監督がルパンの行動原理について語る文章があって、
ルパンは金のため(=泥棒のモチベーション)でも
人のため(=勧善懲悪すなわちヒーローのモチベーション)でもなく、
ただひとつ、「自分の自由を束縛する敵」と戦う事が行動原理になっている、
というような内容に、11歳の幼心でも妙に納得した記憶がありました。

ギャグとシリアス、ユーモアとペーソス。
そのすべてを完璧なバランスで盛り込んだ、正に手に汗握る物語。
音楽業界に携わる者として、そこにひとつ加えたいのが
大野雄二が手掛けたサウンドトラックの貢献度です。

宮崎作品の音楽と言えば白石譲と言えるほど、鉄板のコンビを誇るのは衆知の通り。
しかし、これはルパン作品。そう。あの偉大な「ルパン三世のテーマ」を創出した
巨匠:大野雄二がサントラを手掛けています。

「青ジャケット」ルパンのファーストTVシリーズの音楽は山下毅雄が担当していましたが、
『カリオストロの城』はちょうどセカンドTVシリーズの放映中の製作。
視聴率低迷に悩まされたファーストとは違って、
毎回高視聴率を叩き出していた大人気のセカンドTVシリーズでしたから、
その顔ともなっていた名テーマを作った大野氏が起用されるのも当然の流れ。

しかし大野氏はその自らが作った名テーマに頼ることなく、
見事な才能を発揮した劇伴で映画を活き活きとバックアップします。
ジャズ畑でありながら、独特の日本的詩情に溢れる音楽は
老若男女を問わず琴線を震わせてくれるのです。
いや~同じく大野雄二が作編曲したNHK『小さな旅』のテーマなんて、
もうこれ聴いてぐっとこない人は日本人じゃないよね~。
...すみません、話題がそれました(^^;)

もう語りつくされた『カリオストロの城』ですから
ちょっと音楽の角度から切り取ってみましたが。
例えば「トンガリ屋根とミニロケット」の名シーンなんて、
音楽とのハマリ具合がその破壊力を倍増していると思いませんか?
宮崎演出をがっちりサポートするツボ押さえまくりの音楽効果。
是非再見の際にはご注目下さい。

さて、ファンの方はご存知でしょうが、さらにちょっとした豆知識を。

ファーストTVシリーズの第11話「7番目の橋が落ちるとき」は
『カリオストロの城』の原型とされる名エピソード。
また、セカンドTVシリーズの最終回「さらば愛しきルパンよ」は
宮崎監督がセカンドシリーズで演出を手掛けたたった2本のうちのひとつ。
ロボット兵(『天空の城』の原型)や島本須美(=『カリオスロ』のクラリス)の起用など、
ジブリ作品に親しんだ方にはなかなかマニアックな面白さがある上、
とても30分ものとは思えない大傑作エピソードです。
どちらも比較的簡単にレンタル出来ると思いますので、是非!

という事で、今回は随分よもやま話的な内容になってしまいましたが、
こうして公開から33年を経て尚、こんなよもやま話を成立させ、
また、繰り返し再放送されて新しいファンを獲得し続ける名作『カリオストロの城』。
劇中の銭型刑事の名台詞ではありませんが、
やはり「トンデモナイ」代物であることに、疑う余地はありません。

(おしまい)

*  *  *  *  *
 
【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『紅の豚』(1992年/日)
★4/6(金) 21:00~22:54 日本テレビ 

もう~!日本テレビさんが連打するもんだから!!...すみません。
今週の【観ずシネ】は、またしても宮崎作品になってしまいました。
これは、年を重ねるにつれて不思議とどんどんお気に入り度が増していく、
という、ジブリ作品の中でも異色(そして僕のフェイバリット!)の作品です。
第一次世界大戦後の動乱の時代。
美しいイタリア・アドリア海を舞台に繰り広げられる愛と友情と誇りの物語。
オンエアナビをご覧の仕事人のみなさんにこそ改めて観て欲しい、
ロマンティックな大人のファンタジーです♪
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

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