観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

これはサイレント映画だ!活動写真の魅力満載の『ウォーリー』♪


サイレント映画ってご覧になりますか?
余程の映画通でもない限り、そこまで追いかける方は少ないかも。
チャップリンやキートンの名作あたりが一般的なところでしょうか。

そんな方にもサイレント映画的な楽しさが十二分に味わえる、と言ったら意外?
今週のコラムは、名門ピクサーの傑作アニメ『ウォーリー』を
そんな視点で観直してみたいと思います。

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.22】

『ウォーリー』(2008年/米/監督:アンドリュー・スタントン)
★3/24(土) 19:00~20:40 NHK BSプレミアム 
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CGアニメの技術も相当なところにまで進歩して、
ちょっとやそっとじゃ観客も驚かなくなった昨今。
やはり映画ですから、技術云々よりも物語の面白さによって出来が左右されます。

その点に於いても、ピクサー社は次から次へと優れた作品を届けてくれる、
本当に素晴らしいファクトリー。
何かの取材で見たんですが、ピクサー社はオフィスもスタッフの執務室も
まるで子供部屋のような、ウキウキするような雰囲気が満載。
「人々に夢を届けるエンタテインメントの会社はこうでなくっちゃ!」
と、僕は大変うらやましく思った覚えがあります。
レコード会社のデスクって資料のCDや宣材物の山で、
お世辞にも綺麗とは言えない場合が多いので...あれ?ウチの会社だけ?っつうか僕だけ?

そんな話はさておき、先週放映された『ウォーリー』。
CG慣れした僕も、最初に観た時には、先ずその技術の高さに驚きました。
まだこんなに緻密な表現が出来るのか!?と。

特に、<光の表現>がハンパない。
初見では、ロボットたちのボディに映り込む
反射光のディテールと質感にびっくりしましたが、
今回は前半の地球での自然光の表現力に改めて瞠目しました。

この自然光。画面全体を支配しているので、
主役のウォリー達の動きに目を奪われてあまり意識の中には浮かびませんが、
淡くて優しい自然な光の表現は、ちょっとスゴい。
こういう質感に時間とお金をかける。アメリカのCGアニメの凄みを感じます。

このような技術に感心しながら観進めていくうちに、ふと思ったんです。

「これって、サイレント映画なんじゃないか?」

もちろん、音楽も効果音もウォリーたちの台詞(?)もあります。
でも、基本的にはすべて彼らの<表情>と<動き>だけで語っていく。
そして、それだけで十分過ぎるくらい面白い。
これは正に「サイレント映画」の手法。
全人類が脱出したゴミだらけの地球、という舞台設定が、
必然的にこの演出を後押ししていくわけです。

TVモニターから流れるメッセージなど
必要最低限の言語情報は上手に工夫して織り込んでいますが、
それとて文字に置き換えても、何ら影響はない程度の分量。

始めて「台詞らしい台詞」が登場するのは、
何と映画が始まって39分目からなのです!もう半分近く終わってます!

そして、物語の後半戦は、前半とはうって変わってアクションの連続。
<表情>と<動き>だけで映画を進行させていく、正に「サイレント映画」の極みです。
ウォーリーが古いVHSビデオで何度も何度も観ていた「ダンス」が伏線になって、
宇宙空間を自在に飛びまわる素晴らしいダンスシーンを頂点に
「サイレント映画」=『ウォーリー』は観る者を魅了していくのです。

ここに、ウォーリーとイヴの「ツンデレ」な関係や
人類たちの未来といった要素を織り込んでくるピクサー。やっぱり巧い。
<表情>と<動き>に惹き込まれてあっという間に97分がたった後に、
何ともいえないぽかぽかした気持ちにさせてくれる。
シナリオの構造はいたってシンプルでありながら、
アニメの王道を行く仕上がりを見せる『ウォーリー』。
見逃した方は、是非レンタルして、
<光の表現>と、まるでサイレント映画の様な<活動写真>っぷりをご堪能下さい♪

さて、映画の中では、生活すべてが全自動になり、
立ち歩くことすらほとんどしなくなって、
ぷくぷく体型に進化(?)しちゃった人間たちが登場します。
でもこの人間たち、衣食住に不自由なく、従って何にも争う事が無いから、
みんながみんな温厚でのんびりしてて、何だか微笑ましい。

飽食・怠惰と言ってしまえばそれまでですが、
これで満ち足りてるなら、ぷくぷくちゃんでも悪くないんじゃない?なんて。
「働かざる者、喰うべからず。」の世知辛い世の中で
ストレスを抱えながら日々暮らす身としては、ちょっと羨ましい気もします。
...なんて言ったら、ウォーリー共々、イヴに叱られちゃうかなあ(^^)

(おしまい)

*  *  *  *  *
 
【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『ルパン3世/カリオストロの城』(1979年/日)
★3/30(金) 21:00~23:04 日本テレビ 

33年前、11歳・小学校5年生の時に劇場に観に行きました。
しかも『Mr.Boo!インベーダー大作戦』と2本立てという、
今からは考えられない組合せ(^^;)
今では泣く子も黙る名作中の名作も、封切り当時はそんな扱いでした。
来週の"観ずシネ"は、無謀にもこのアニメ史上に燦然と輝く大傑作を取り上げます。
いやあファン多いからなあ~。大丈夫か、俺!?
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

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