観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

"キモカワイソウ"というニュージャンル!?異色のエイリアンもの『第9地区』


もしも地球に大量のエイリアンたちが助けを求めに来たら?
そんな異常な設定が「当たり前」という、特異な設定で描く異色のエイリアン映画、
『第9地区』が、先週、地上波テレビ初放映となりました。

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.21】

『第9地区』(2009年/米・ニュージーランド/監督:ニール・ブロムカンプ)
★3/16(金) 21:00~22:54 日本テレビ 

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南アフリカのヨハネスブルグに突如飛来した巨大UFO。果たしてその目的は!?

と来れば、まあ十中八九、普通は「地球侵略」ですわな。

ところが、そこに乗っていたのは何と難民(!?)のエイリアンたち。
食料も尽き、瀕死の状態でようやく地球にたどり着いた彼らを
地球側がヨハネスブルグの第9地区を難民避難区域にして迎え入れてから28年後...。

そんなトンデモない設定がこの『第9地区』の背景です。

エイリアンたち、そんな具合で最初は弱弱(よわよわ)ですから、
その容姿を由来に、地球人たちも彼らを「エビ」とあだ名して馬鹿にしています。

『エイリアン』にしろ『プレデター』にしろ『インディペンデンス・デイ』にしろ。
古今東西、映画に於いてエイリアンといえば、人知を遥かに超えた脅威の存在。
もしくは『E.T』などに代表される愛すべき存在。
そう、相場は決まっているもの。

だから、「馬鹿にされてしまうエイリアン」という
この発想時点で、『第9地区』は特異なSF傑作として既に成立しています。

その難民エイリアン受け入れから28年。
第9地区はスラム化し、近隣の住民からも疎まれるエリアに。
そこで講じた策が、新しく整備された遠隔地のエリアに
第9地区のエイリアンたちを移住させること。

その交渉役に選ばれたのが、能力は無いのに有力者の娘に婿入りしたお陰で
「ここは勝負一番、家名に恥じないよう、男を上げて来い」とばかりに
ミコシに上げられてしまった頼りない優男のヴィカス。
権力を盾に、エイリアンたちに立ち退き要求を突きつけていきます。
しかも英語で...(^^;)
エイリアンたちを見下し、奢った地球人を描く事で、
寓意的に差別や権威主義を描いていているのも、この映画のポイント。
さりげなく仕込まれた下品なユーモアも、笑いを誘います。

しかし。
「馬鹿にされて」はいても、「エビ」たちは一度(ひとたび)暴走すれば、
とんでもない運動能力と破壊力を発揮して、人間はひとたまりもなく木っ端微塵。
また、元々は星間航行が可能なほどの科学力を備えているわけですから、
身体能力だけでなく知能も科学技術も、馬鹿にするどころか、
遥かに地球より上。そこを忘れちゃいけないのに。

それがたまたま遭難しちゃったもんですから、
地球側は、相手が弱っているのをいい事に「やーいエビエビ」と
おちょくっていたに過ぎないんですね。

さて、ここまではほんの冒頭で、
ここから映画はどんどんトンデモない方向に進み、
「そんなんアリかい?」と思わずツッ込みたくなる結末を迎えます。

荒唐無稽と言ってしまえばそれまでなのですが、
そこに至る描写があまりにも緊迫感漂うものなので、
観ている僕らもそれに釣られて、妙に納得してしまう。
ドキュメント意外の映画は、本質的にすべて「ホラ話」だと思うのですが、
その「ホラ」のつきかたが非常に上手なのが、
この『第9地区』なのです。

その上手な「ホラ」を影でしっかり支えているのが
ドキュメンタリー・タッチの描写手法。
関係者の回想コメントをインサートしたり、
記録用のハンディ・カメラを映画自体のカメラとして機能させたり、
「ホラ」を「リアル」に感じさせる工夫が、大変効いています。

そして、極めつけが主人公のヴィカスを演じたシャルト・コプリー。
台詞のほとんどがアドリブだった、という噂もあるくらい、
ダメダメさ加減も含めて最高のハマリ役でした。

少々描写はえげつなく気持ち悪いけど、観ているうちに、、
不思議と醜いエイリアンたちに感情移入し、逆に人間たちの醜さに気づく。
そして、板ばさみになってしまった主人公に哀れを感じる。

そんな不思議な印象を残す「キモカワイソウ」なエイリアン映画『第9地区』
見逃した方は是非レンタルで!

ただし。その時のお食事はエビフライは禁物です(^^;)

(おしまい)

*  *  *  *  *
 
【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『ウォーリー』(2008年/米)
★3/24(土) 19:00~20:40 NHK BSプレミアム 

キモカワイソウなエイリアンSFの次は、
マジカワイイ、ディズニー&ピクサーの傑作アニメーション。
「700年間、ずっと誰かと手をつなぐことを夢見たひとりぼっちのロボット。」
そんな予告編を観ただけで、大の大人も涙がちょちょ切れそうになりますが、
本編はわくわくドキドキの冒険ファンタジー!
人間(とロボット?)にとって本当に大切なものを
涙と笑いの中で描いて見せたこの感動作を観ずには、700年間死ねません!
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

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