観ずに死ねるか!~今週のシネマ選~

ジュード・ロウ主演『スルース』~ミステリ映画史上最高の"騙し・騙され"をリメイク!~


舞台が原作のミステリ映画に傑作数多し。
先週はその中の名作のひとつ、『探偵スルース』のリメイク版が放映されました。
今週のコラムはオリジナルと併せて、その『スルース』をご紹介します。

*  *  *  *  *

【観ずシネVol.20】

『スルース』(2007年/米/監督:ケネス・ブラナー))
★3/5(月) 深夜2:29~4:00 日本テレビ 

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舞台用の戯曲をジョセフ・L・マンキウィッツが
1972年に映画化した『探偵スルース』。
本格ミステリ好きにはたまらない、このミステリ映画史上最高の1本を、
これまた名優・名監督のケネス・ブラナーがリメイクしました。

本格ミステリの巨匠が、若い妻の浮気相手を豪邸に招いて復讐を図ります。
招かれた若者は、そうとも知らずにミステリ作家の仕掛けた罠にはまって...。

限定された舞台。たった二人の登場人物が繰り広げる舌戦。
これだけで映画なんて出来るでしょうか?

出来るんですねえ、これが。

オリジナルの『探偵スルース』では、
作家をローレンス・オリヴィエ、若者をマイケル・ケインが演じていましたが、
リメイクの『スルース』では、
作家をそのマイケル・ケインが、若者をジュード・ロウが演じる、という
ケネス・ブラナーの粋な計らいが感じられるキャスティング。
オリジナルのファンが興味津々になるよう仕掛けられています。

さて。このテの映画はネタバレ禁物なので、
あとは「二人の丁々発止をお楽しみ下さい!」としか言えないのですが。
それではコラムにならないので、いくつか見所を。

まず、ドンデン返しが見物のこの映画ですが、
オリジナルとリメイクではオチが違います。
ここが一番大きな違い。

それから、オリジナルの舞台は、ミステリ作家の自邸らしく
事件が起こりそうなカントリー・ハウスで、
迷路の庭・機械仕掛けの人形・パズル・ゲームその他、
ミステリ・ガジェットが散乱。
ひるがえってこのリメイクでは、
超シンプル・モダンな現代邸宅で、チリひとつ落ちていません。

同じ原作ながら、脚色を変え、舞台を変えたオリジナルとリメイク、
果たしてどちらに軍配があがるのか?

う~ん。僕はやっぱり、オリジナルの勝ち!だと思いました。

オリジナルの魅力は、いかにも「らしい」舞台装置で
大小様々なドンデン返しが何度も繰り返され、
観る者の予想を裏切っていきます。これがとにかく面白い。

リメイクも基本構造は一緒なのですが、
大ネタにある種終始していて、この「次から次へ」感が少々物足りないんです。

次から次へと起こる「小さなドンデン返し」に興味を惹きつけられていくうちに
「大きなドンデン返し」が仕込まれていることに気づかない。
そして結末で「あっ!」と驚く。
その噛み合わせが、やっぱりオリジナルの方が一枚も二枚も上手なんですね。

ケネス・ブラナーも、さすがのプライドで「オリジナルとは違うぜ!」
とこだわってオチの違いに挑戦したのだと思いますが、
換骨奪胎とまでは行きませんでした。
ヒッチコックの名作『サイコ』を
ガス・ヴァン・サントがカット割りも含めて完全コピーしましたが、
変に違いにこだわらず、それくらい徹底してリメイクしてみるのもアリだったかなあ。

そうそう。原題の"Sleuth"は、"Detective"の口語表現で、「探偵」のこと。
つまり、「真相を調べるのは、観ているあなた自身ですよ。」
というメッセージなんですね。

ということで、
是非この『スルース』は、30年前のオリジナル『探偵スルース』を観てから
両者の違いを<探偵>しながら観るのが、清く正しい楽しみ方と心得ます♪
ホント、騙されたと思ってオリジナルを観て下さい!マジ、騙されますから!

(おしまい)

*  *  *  *  *
 
【今週の"観ずに死ねるか!シネマ"】

『第9地区』(2009年/米・ニュージーランド)
★3/16(金) 21:00~22:54 日本テレビ 

南アフリカのヨハネスブルグに突如飛来したUFO。
そこに乗っていたのは難民(!?)のエイリアンたち。
第9地区を難民避難区域にして彼らを迎え入れてから28年後...。
そんなトンデモない設定で描かれたグロくて物悲しい傑作SF!
エイリアン・コンタクト物としては、ちょっと他では観たことのない映画かも。
その意味でも、これは観ないと死ねない1本。でもグロいよ。
コラムニスト:助川 仁

ビクターエンタテインメント株式会社 編成管理チーム長 兼 KOKIAディレクター

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