箸道 ~食と生活とおいしい生き方~

人生を変えたあの一言

おはようございます。
「箸道」と「サイコロジック」の牟田実(むたみのる)です(^。^)

前回の「料理に秘められた謎のメッセージ」。には
多くの方々からさまざまなご意見ご感想をいただきました。

・面白かった、
・勉強になった、
・料理の深さを知りました、
・次回も楽しみ
・・・などなど

こういうお言葉を頂戴すると「またがんばろう」という気になります。
言葉というのは、人を動かすパワーを持っているんだということをあらためて感じました。

サイコロジック的にはこのように「またがんばろう」と思わせる
きっかけとなるものを、「心理的報酬」と言います。
ある行動の後で、報酬やペナルティーを与えると、その後の行動が変わるというものです。
たとえば、あなたが男性として、素敵な女性から「そのネクタイお似合いですね」と言われると
「次回何かのときには、このネクタイしていこう」と思いませんか?

つまり、「お似合い」という報酬をもらったことで
次回このネクタイをするという行動につながるのです。
報酬は、ほめたり励ましたり、
そして、ペナルティーは、叱ったり注意をすることが代表的なものです。


そうそう、こんなご指摘もいただきました。
「料理人のメッセージを読むのはいいけど、
メッセージを読み取ろうと悩んでいるうちに、前菜は乾燥する、お椀は冷える、
ビールの泡は消えてなくなるなんてなったら、おいしくないと思うんですが・・・」

鋭いご指摘。ごもっとも。
熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちにいただくのが大事です。
こういうお言葉を頂戴すると「ありがとうございます」と言いたくなります。
なぜなら、どうやったらおいしくいただけるかを
真剣に考えていただいているからこそ出てくるご意見ですので。

最後までお読みいただきありがとうございました。

また、お会いしましょう。
「えっ!マジかよ!今回のコラム手を抜いてるんじゃないの」
という言葉が聞こえてきそうです。

実は、私にとって、本日のテーマ「人生を変えた一言」は、この文章の中にあります。
その一言とは、「え、! マジかよ!」?

いえいえ、そのちょっと前の一言です。


●家族の気持が癒された看護師さんの一言

数年前のことです。永年同居していた義母が体調を崩し
急性期の病院で検査したところ、末期の胃ガンであることがわかりました。
検査後、そのまま即日入院となりました。

癌の転移の状態や高齢ということを考えると
手術や抗がん剤使用はむずかしいという説明を医師から受けました。
結局、緩和ケア病棟がある病院に転院し
そこで、痛みを押さえる対処法を選択することにしました。


緩和ケア病棟に入院して約2カ月後、それまで安定していた容体が急変し
担当医から「親しい人に連絡を」という話がありました。
それからまもなく、家族が見守る中、義母は静かに息を引き取りました。
先生が臨終の時刻を告げた時、義母を担当してくれていた看護師さんが
義母に向かってこう言いました。

「トシコさん(義母の名前です)、ありがとう。また会おうね!」
すると、先生も「私もお会いできてよかったですよ。またお会いしましょう」

義母は、その優しい性格から多くの人に愛されていました。

「また、お会いしましょう」

といわれたことで、義母がこの病院のスタッフからも愛されていたことがわかりました。
そして、病室は「別れの場」ではなく
「そこには、彼女が生きた証があり、いつかまたきっと会える」という感じがしました。

この一言で、「別れの辛さ」を感じるのではなく、「よかったね、みんなに愛されて」
そして、義母に対してあらためて「永い間、ありがとうございました」という
感謝の気持ちになりました。

これは私だけでなく、家族全員がそう感じた瞬間でした。


●病院を変えた一言

ある総合病院で、医師と看護師の患者サービス向上についての
プロジェクトをお手伝いさせていただいたときのことです。
その病院は、癌研究センターや高度救急医療施設を備えた
関東地方の某県最大規模の総合病院です。

プロジェクトの合間に、そこの癌センターの看護師長さんから
次のようなお話をお聞きしました。

「私達の病院では、医療スタッフが病室から出る時、入院患者さんに向かって
『また、来るね』といって出るようにしています。
これは、あることがきっかけだったんですよ」

そのきっかけとは、こんなことでした。

今から数年前のこと、10歳の女の子が小児がんでこの癌センターに入院していました。
以前から、彼女はご両親と「病気が治ったら、ディズニーランドに行こう」と
約束していました。

しかし、一進一退の病状が続き、たぶんこのままでは
その夢をかなえるのは難しいと主治医は判断しました。
主治医は、ご両親に、本人が希望することを
今のうちに叶えてあげたらどうかと話をしたそうです。

そこで、ご両親と病院とで話し合い
特別に外出許可をもらってディズニーランドに行くことになりました。
彼女を車いすに乗せ、ご両親、主治医、担当看護師、
そして小学校の仲の良いお友達二人の合計7人で
車をチャーターしてディズニーランドに行きました。

パレードを車いす席で見ていると、キャラクターやダンサーが
つぎつぎに彼女のところに来てくれて、車いすの彼女に触れて
「また、お会いしましょう」といって、パレードが進んでいきます。

それを見ていた看護師さんが、電気ショックのようなものを感じたといいます。

その女の子のように、ディズニーランドには「思い出を作りに来る人」がたくさんいます。
そこで、キャラクターやダンサーが、手を振りながら
「バイバイ」「さようなら」と言って去って行ったら
気持の上でも、その人の人生そのものに対しても「バイバイ」という印象を与えかねません。

しかし、「またお会いしましょう」と言われたら、言われた方はきっと心の中で
「早く良くなって、また来るね」と答えたに違いないと、その看護師さんは思ったそうです。

病院でも同じ。消灯時間になり、看護師さんが患者さんに
「おやすみなさい」といって病室を出て行くと、患者さんは、不安に感じるかもしれない。

そこで、このディズニーランドでの体験を生かして、この病院では病室を出る時
「また、明日ね」とか「また、来るね」と言うことにしようと
院内の会議で決めたとのことでした。

残念ながら、その数カ月後に、この少女は天国に旅立ったそうです。
きっとまたどこかでご両親やお友達と会えることと思います。


●また、お会いしましょう

私にとっては「また、お会いしましょう」という言葉は、まさに人生を変えた一言です。
一期一会(いちごいちえ)とよく言われます。
もう会うこともないだろうと思っても、やはり、「さよなら」「バイバイ」ではなくて
「また、お会いしましょう」と言うようにしています。
そう言うと、自分はひとりで生きているのではない、
誰かに生かされているんだということを強く感じるようになりました。


先日、ディズニーシーに行ってきました。
レジェンド・オブ・ミシカという水上ショーを観ました。
ショーの一番最後にミッキーマウスは次のように言います。

「みんなの力で、世界はひとつになったよ。 バイバ―イ」
「また、会おうね」

 

最後までお読みいただきありがとうございます。
また、お会いしましょう。

コラムニスト:牟田 実

食と生活ラボ代表

食と生活ラボ代表 http://www.shoku-labo.com/
NPO法人日本箸道協会 副理事長兼事務局長 http://www.hashido.net/
Facebook: http://www.facebook.com/minoru.muta
m-muta@hashido.net

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